今日の一冊
内容(「BOOK」データベースより)
家庭裁判所調査官の武藤は貧乏くじを引くタイプ。無免許事故を起こした19歳は、近親者が昔、死亡事故に遭っていたと判明。また15歳のパソコン少年は「ネットの犯行予告の真偽を見破れる」と言い出す。だが一番の問題は傍迷惑な上司・陣内の存在だった!読み終えた瞬間、今よりも世界が輝いてみえる大切な物語。
著者について
伊坂 幸太郎
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞と第21回山本周五郎賞を受賞する。近著に『フーガはユーガ』『ホワイトラビット』『AX』がある。
登場人物
陣内
家裁調査官 破天荒な人
武藤
家裁調査官 陣内とコンビを組まされている人
永瀬&優子
陣内の友達夫婦 永瀬は目が見えない
棚岡
未成年 無免許で交通事故を起こし人を殺している
小山田
未成年 ネット上で脅迫文を書いている投稿者を脅迫する事件を起こした。ネットで犯罪を犯す可能性がある人を特定することができる。
若林
10年前未成年で交通事故を起こし人を殺している
鴨居さん
チルドレンに出てきた鴨居さんはサブマリンには出てきません
これは伊坂さんがデビュー前に書いた小説で鴨居さんが亡くなる話を書いてるからだそう、そんなところまでちゃんとつじつま合わせてる伊坂さん恐るべし
あらすじ
棚岡少年が無免許で交通事故を起こし、破天荒な陣内とペアを組む武藤がその事故の調査にあたるお話。
ここからネタバレ
調査していたところ、どうやらこの事故は単なる偶然ではないことがわかる。
棚岡は小さいころに両親を事故で亡くしただけではなく、10年前にも未成年(若林)の運転する車が自分たちの通学する列につっこみ親友を失っていた。
その若林に復讐をしようとした棚岡が、偶然飛び出してきたチワワを避けるためにハンドルをきったことにより起こった事故だった。
しかも棚岡くんには陣内も武藤も伝えなかったけどこの時死んだ男の人が小山田君がみつけた犯罪を犯す可能性のある人だった。
ってことは彼がしたことは無意識の正義ではないの?
少なくとも罪悪感でつぶされそうになりながら生きる必要はないのではないの?ということも問題提起されて物語は終了。
感想
未成年が犯罪を犯す話はさまよう刃もそうだけど読んでいて心が重くなる話が多いなか、このサブマリンはめちゃくちゃなキャラクターの陣内さんがいるおかげで『未成年が犯罪を犯す部門』の中では軽いテイストになってると思う。
でも考えさせられるところは同じ。
特にこの本では未成年でありながら犯罪を犯した3人が、どこにでもいる普通の子供なので余計に苦しく感じる。
しかも棚岡君の殺した相手は犯罪を犯す可能性のある人間なので
犯罪を犯している最中にその人をやっつけたら正義なのに犯罪を犯す前にその人を殺したら?しかも無意識に犯罪を犯す前の人を殺したら?
と考えちゃいます
後は陣内さんのキャラが惚れる。
破天荒で面倒臭がりで負けず嫌いでむちゃばっかりいってる周りに迷惑かけまくる陣内さんが、10年前に棚岡少年が陣内さんに「亡くなった少年が楽しみにしていた漫画の続きを読ませて」とお願いしたことをちゃんと覚えていて、すでにその漫画を描かなくなっていた漫画家に詰め寄り(強引(笑))書かせたエピソードや家庭環境が悪く、部屋に引きこもり、脅迫文を見てはそれに対して脅迫文を送ってた頭のよいでも孤独な小山田少年の家にしょっちゅういって、
「友達が遊びに来ているんだろうが」
と当たり前のようにいう陣内さん かっこよすぎる。
好きな言葉
「時間が和らげない悲しみなどない。が、悲しみはゼロにはならない」
味方や仲間はもちろん、どんな敵に対しても、
そいつの大事にしているものを踏みつけるような真似はするな。
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