汚れた手をそこで拭かない 芦沢央

今日の一冊

内容(「BOOK」データベースより)

平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。元不倫相手を見返したい料理研究家…始まりは、ささやかな秘密。気付かぬうちにじわりじわりと「お金」の魔の手はやってきて、見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。取り扱い注意!研ぎ澄まされたミステリ5篇。 –このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

芦沢/央
1984年東京都生まれ。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第三回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) –このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。

あらすじ(ネタバレあり)と感想

ただ運が悪かっただけ

余命半年の妻に「過去に人を殺してしまったことがある」と告白する夫の話

工務店で働いてた夫。小さな仕事を頼んではその報酬の100倍くらいの嫌味を言ってくる嫌な客にも真摯に対応していた。

ある日その嫌な客が宝くじを当て割と大きな家の改修工事を依頼してきた。なんとか文句を言われながらも仕事を完了。ところがその客は後日夫を呼び出し電球を変えるたびに仕事を頼むのはもったいないから脚立を置いていけという。

既に使っている脚立なので新品を入荷しますと答えるが客は今おいて帰れとしつこく言う。

面倒になった夫はその脚立を置いて帰ってきてしまった。

その後その脚立の一部分が壊れていたことに気づかずお客さんは足を踏み外して死んでしまった。

というのが夫の紅白。

破損がいつ起こったのかわからないが売らなければこんなことにはならなかったと夫はずっと苦しんでいたのだ。

でも妻は思う。その時そばにいた何十年かぶりに帰ってきた娘。その娘は脚立を運ばされている時にその破損に気づいていたはずだと。

気づいていてかつそのまま父親に電球を変えさせたのじゃないかと、大いばりで、宝くじが当たったことを話し娘には1円も上げないであろう父親の運を試すため。

真相はわからないですが、娘の父に対する能動的でない復讐説が私も正しい気がしました。

そうでなくても少なくともこの主人公の夫が悩む必要はなさそう。どの道タイトル通り「ただ、運が悪かっただけ」だから

埋め合わせ

プールの水を間違って排水してしまった千葉先生の話

素直に報告して弁償したら13万円ほど。

でもばれるのはなぁっと思って夏休み中に子供がいたずらで水道の蛇口をひねったまま帰ったことにして子供に罪をきせることに。

が、たまたま学校に来ていた五木田先生にその作戦がばれてしまう。

でも最近競馬で負けた五木田先生はお金の痛さがわかるのか自分の作戦を手助けしてくるというが…。

実際は五木田先生はさらにプールの水を排水し、千葉先生の負債は30万円ほどになる。

五木田先生は競馬の負けを5万と妻に報告していたが実際は30万円ほどで、その言い訳を「プールの水を間違って排水してしまったから」ということにするつもりで千葉先生をはめたのだった(実際報告書には学校名と損害額などしかのらず名前までは掲載されないため)

まぁ最初から子どもに罪をかぶせず自分で報告しておけばって話ですよね。

ただ、自分のミスで多大な損害が!!!!ってなった時の千葉先生の青ざめた感じはリアルで読んでいてもひやひやしました。

忘却

老夫婦が住むアパートの隣の男性が死亡した原因はクーラーをつけずに寝てたことによる熱中症

夫は数日前に隣の男性の電気代の滞納による電気の停止のお知らせが自分たちのポストに入っていたために妻に返しておくように言っていた。でも最近認知症の症状が徐々に進行している妻はそのことをすっかり忘れていたようだ。

今もまだ忘れているようだから妻にはこのまま内緒に・・・

と思っていたら妻が「何か大事なことを忘れている気がする」というようになり・・・

結局となりの男性は簡単な配線工事などをしてあげるためにこの老夫婦の家を訪れた時にこっそり電気を盗んでいた。なのでクーラーの電気はこの老夫婦の家から盗まれていたため電気代の滞納とは無関係だった。たまたまブレーカーが落ちたことがありその時にクーラーがとまってしまい寝ていた隣人はそのまま亡くなったというのが真相。

まぁそれなら全く罪悪感を持つ必要はないもののやっぱり気持ちのよいものではないので老夫婦がかわいそうな話。

お蔵入り

売れない映画監督(大崎)渾身の作品。有名俳優の岸野とアイドルグループの小島が主演を務める映画がようやくクランクアップした。

今度こそ間違いなく成功する。

そう思っていた矢先、岸野に薬物使用の疑いがかかっていることがわかる。大崎が問い詰めると岸野はあっけなく薬物使用を認める。

このままではお蔵入りになる。その気持ちからか話し合いの途中で大崎は岸野を突き落として殺してしまった。

ところが、ある女性が小島の声が岸野の部屋から聞こえたと証言し、小島に容疑がかかる。

証言した女性が小島のファンだと踏んだ大崎は証言を撤回するように女性に言いに行くが、実際は女性は小島のファンではなく、しかも実際は大崎が犯人であることも知っていて、警察に真実の証言をすると大崎に告げて話は終わる。

証言した女性が昔太っていてロケで訪れた小島に「肉まんちゃん」と呼ばれて一瞬その小さな町で有名になってしまったことに対する恨みで小島を犯人にしようとしてたというのが真相。

ミモザ

料理本のサイン会にかつての不倫相手である瀬部がやってきた。

そっと「二人で会おう」という紙が入っていてのこのこいくと彼はすでに出版社をやめて清掃員の仕事等をしていて借金を頼んできた。

彼女はかつての自分と彼の関係とは変わったことを感じかつての彼に見返すつもりで30万を貸す。

すると後日、返済すると彼から連絡が・・・

でも行くとさらに10万貸してくれと言われる。

断ると、有名人がかつての不倫相手と不倫していると夫などにばらすと脅される

めちゃくちゃ怖い!これすごく怖いわ。まさか昔付き合ってた人がここまで屑になってると思わないしぞっとした。

まとめ

芦沢央さんの作品は何度目かですが、ものすごく面白くなってました。

特にミモザ ぞっとします。



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