夜想 貫井徳郎

内容(「BOOK」データベースより)

事故で妻と娘をなくし、絶望の中を惰性でただ生きる雪籐。だが、美少女・天美遙と出会ったことで、雪籐の止まっていた時計がまた動き始める。やがて、遙の持つ特殊な力は、傷ついた人々に安らぎを与え始めるが…。あの傑作『慟哭』のテーマ「新興宗教」に再び著者が挑む。魂の絶望と救いを描いた、渾身の巨篇。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

貫井/徳郎
昭和43(1968)年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。平成5(1993)年に、第4回鮎川哲也賞の最終候補作となった「慟哭」で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

あらすじ&感想

事故で妻と子供をいっぺんに失った男が主人公。

最初は気を使ってくれた職場の人たちもいつまでも癒えない悲しみと絶望で仕事でミスしてしまう主人公に対して困惑している。

主人公自身もどうしたらいいかわからない。そんな時に偶然落とし物を拾ってくれた人が自分をみて悲しんでくれる。

その女性(遥)はその人の持ち物に触れるだけでその人の思考を読み取ることができる不思議な能力をもっていて・・・

主人公は自分が救われたように、彼女にはたくさんの人を救う力があると考え、彼女のことを広く知ってもらおうと活動するようになる。

本人たちは宗教だと思っていないし、実際は宗教ではないのだけど、急速に拡大していく団体はまさに新興宗教の成長。

一方別の場面では娘が突然家を出て行った母親が必至になって娘を探しているシーン。

この母親がこの宗教に出会うことで大きく状況が変わる

→ここからネタバレ

この母親は実は本当の娘はすでに殺して家に埋めている。(今探しているのはそのあとに寂しくなってその辺の家出の子を家に招き入れて、そしてその子がうるさいおばさんが嫌になり出て行っただけ)そのことに遥はすぐ気づくもすぐには彼女に言えない。

母親は当たると聞いてきたのに騙されたと怒りながら帰る。

そして遥の講演終了時に彼女を襲う。

彼女は形成手術を何度もしなくてはいけない傷を負い、団体から抜け出す。

(おばさんは結局、遥が娘の死体が埋まっていることを警察につかまり事件自体は解決している)

主人公はしばらく彼女を必死に探し、そして彼女を見つけて誰からもなにもされないように家にかくまっているが、実はそれは単なる人形。

それどころか最初からずっと通っていて、遥とのことも報告していた精神科の医者すら自分の妄想だった。(これにはこっちもびっくり)

で、結局遥によって救われていなかったことに気づくが癒えない悲しみがあるのだと認めることで少し救われる

そしてもう一度遥と再会する

という感じのお話。

ただただ、人の助けになればと思っていた遥が思っていた方向と違う方向に進んでいってしまうという話と宗教を使ってでも子供を見つけ出したいと思っている母が実は子供を殺していたという話の両方がとても中途半端に感じてしまう。どっちかだけをもっと深堀してほしい。




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