内容(「BOOK」データベースより)
我が家の嫁姑の争いは、米ソ冷戦よりも恐ろしい。バブルに浮かれる昭和の日本。一見、どこにでもある平凡な家庭の北山家だったが、ある日、嫁は姑の過去に大きな疑念を抱くようになり…。(「シーソーモンスター」)。ある日、僕は巻き込まれた。時空を超えた争いに―。舞台は2050年の日本。ある天才科学者が遺した手紙を握りしめ、彼の旧友と配達人が、見えない敵の暴走を阻止すべく奮闘する!(「スピンモンスター」)。
著者について
伊坂幸太郎
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒。2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。04年に『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を、短編「死神の精度」で日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。08年には『ゴールデンスランバー』で本屋大賞、山本周五郎賞を受賞、14年『マリアビートル』で大学読書人大賞を受賞。その他の小説に『SOSの猿』『フーガはユーガ』『クリスマスを探偵と』『ホワイトラビット』『陽気なギャングは三つ数えろ』『火星に住むつもりかい?』『アイネクライネナハトムジーク』などがある。
バブル期 シーソーモンスター
登場人物
直人・・・主人公。製薬会社の営業。同居する母と妻の折り合いが悪く先輩の綿貫に相談に乗ってもらっている。
宮子・・・直人の妻。直人には隠しているが元特殊部隊。どうしても姑セツとうまくいかない。
セツ・・・直人の母。宮子についつい冷たくしてしまう。
直人の父・・階段から足を滑らせて死亡している。
綿貫・・・直人の先輩。直人から嫁姑の板ばさみについての相談も受ける。
病院の院長・・元綿貫の担当。過去に直人の父に助けてもらった恩がある
院長の息子・・直人の担当。院長の引退し2代目として病院を経営する。
あらすじ
直人は製薬会社の営業。時代はバブル期で、医者への接待が半端ない。
世の中お金がとにかくあふれかえっている。営業の仕事も基本医者の接待。
先輩の綿貫と一緒に接待した病院の院長は、直人の死んだ父の同級生で、院長は直人の父に助けてもらった恩があるということで直人をかわいがってくれる。
今回、院長が引退し息子が院長になるというのでその病院の担当も綿貫から直人に変わることになった。
若院長は院長と違い毎日派手に遊んでいる。
直人は「そういえば病院もそんなに混んでいないのにどこからお金が出てるんだろう」と疑問に抱き、彼が保険料の水増し請求をしていることに気づく。
そしてそれに気づいた直人は監禁される。
目が覚めるとそこには綿貫がいて、目の前で遺書を書いて死ぬように言われる。
死にたくないと思った直人が意識を失う前に見たのは、仲が悪かったはずの嫁と母が一緒になってこちらに向かってくる姿だった。
実は妻の宮子は特殊部隊で働いていたこともあり、姑とうまくやっていくなんて余裕だと思っていたが、実際はそりが合わず苦労していた。
ある日、姑の夫も姑の父母も事故で死んでいることを不審に思った宮子は姑が保険金殺人をしているのではないかと疑う。
そんな時に夫からいつもとは違う調子の電話がかかってきて。
夫が大変な目にあってると気づいた宮子は夫を助けにいく
そこに姑が登場。実は姑も元特殊部隊で働いていた経験を持っていた。
特殊部隊で働いていたため敵にセツ自身ではなく家族を殺されていた。
二人はいつもは犬猿の仲だが、初めて手を組み夫の救出に成功する。
その後、姑とは別居。
ただ離れることで関係は改善し、お互い反発しあうもいい距離感を保てるようになったらしく、二人で絵本を共同制作するようになったというところお話終わり。
感想
今後経済が低迷することなんてまずないと日本人皆が思ってる感じがまさにバブルでそれだけで読んでいて楽しかったです。
後ではじけてしまったけどこの時代をちょっと味わってみたかったなぁ(生きてはいたけど子供だったので)
そして綿貫やばいやつだったのかよ!ってか嫁の元職業が特殊部隊って!!って思っていたら姑もかよ!!という怒涛の展開面白かったです。
この後スピンモンスターでも宮子さんでてきます。嬉しい
近未来 スピンモンスター
登場人物
水戸・・主人公。配達人
桧山・・主人公にとって対立すべき存在
中尊寺敦・・AIをストップさせるために奮闘
あらすじ
2050年頃の日本。(最近は近未来といえば2050年が多いな)
デジタルデータはすぐに改ざんされてしまうので、この時代は直接人が手紙を配達する「配達人」という仕事がある。
主人公の水戸は配達人。
手紙を札幌の相手に届けるために、新幹線にのる(この時代は北海道まで新幹線が通っているらしい)
すると突然隣に座った男(寺島テラオ)に手紙を渡される。
寺島テラオは手紙を渡すとそのまま姿を消す。(その後死亡)
手紙の中には「旧友中尊寺敦にこの手紙を渡してほしい」という配達依頼文が書かれていて、実際教えていないはずの水戸の口座には依頼代金が振り込まれている。
どうして彼は自分のことを配達人だと知っていて、なおかつ口座も知っていたのか、興味がわいた主人公の水戸は新幹線が途中で緊急停止したこともあり、彼の依頼を引き受けることにした。
ただ、手紙を渡すと相手とは「世界的に人気な音楽バンドのメンバーが亡くなった時に青葉城の伊達政宗像の前で会おう」と口約束していただけらしく会えるかは半信半疑。
ところが、像の前には昔の約束を覚えていた中尊寺敦が待っていて、水戸は無事に配達をすることができる。
そして中尊寺敦に渡した手紙には彼が開発した人工知能「ウェレカセリ」を止めてほしいということが暗号で書かれていた
これをなぜか一緒に配達人もどうにかすることに。
で、ウェレカセリをとめることができるシステムが置いてあると考えて訪れたのが「シーソーモンスター」で出てくる宮子の家。
ところで、配達人の水戸は小学校の時に、自動運転中の自動車の事故で家族全員を失くしている。
その時に事故相手となった自動車に乗っていたのが桧山。
桧山もまた自分以外のすべての家族をこの事故で失っている。
二人がこの物語の海のものと山のもの。なぜか常に出会ってしまうし常に対立してしまう。
今回の事件でも中尊寺と友にウェレカセリをストップさせるために動く二人を追いかける警察官の一人が桧山。
こうやって避けても二人は敵として何回も出会ってしまう。
ということで宮子の家でせっかく手に入れたシステムが入ったパソコンは追ってきた警察の発砲により壊れてしまう。
万事休す??
と思いきや小学生の頃の事故で入院した時に、研究の一環として水戸の目には水戸に内緒ですべてを記録するレンズがはめられてることがわかり、その映像を取り出すことで、壊れてしまったシステムの内容を水戸の目を通して再現することができ、無事人工知能はストップできました めでたしめでたし
感想
近未来+人工知能という内容で、めちゃくちゃあらすじが書きづらい物語でした。
伊坂幸太郎さんの話は空想話でも都合がよすぎる物語でも、この世界だったらそんな偶然も起こりえるかもって思わせてくれる作家ですが、さすがに水戸の目にレンズがはめ込まれているという話は都合がよすぎるような気がしました。
研究のために未承諾で人の目に記憶媒体を埋め込む。
ってこと自体もあれだけど、何より普通の小学生の目に記憶媒体埋め込んで手に入るデータとか絶対大したことないでしょ‥。
それより、水戸は事故後に桧山と再会し、桧山に嫌な思いをさせられ続けたという記憶が残っているけど本当は自分が桧山に対してした嫌なことをされたことと記憶を改ざんしていしまっている、さらに言うと事故自体も水戸の都合のよいように記憶を変えてしまっているっていうあたりをもうちょい深く掘り下げて欲しかった。
小学校の頃の記憶とか私もかなり忘れてしまっていて、覚えていることですら本当かどうか怪しいもんだなぁっと思いながら読みました。
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