【学級委員長になりたがる女子】スペードの3 朝井リョウ

今日の1冊

内容(「BOOK」データベースより)

有名劇団のかつてのスター“つかさ様”のファンクラブ「ファミリア」を束ねる美知代。ところがある時、ファミリアの均衡を乱す者が現れる。つかさ様似の華やかな彼女は昔の同級生。なぜ。過去が呼び出され、思いがけない現実が押し寄せる。息詰まる今を乗り越える切り札はどこに。屈折と希望を描いた連作集

著者について

朝井 リョウ
1989年生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2013年『何者』で、戦後最年少で第148回直木賞を受賞。2014年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治賞を受賞。他の著作に『世にも奇妙な君物語』『少女は卒業しない』『ままならないから私とあなた』『何様』などがある。 –このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。

ネタバレありあらすじと感想

スペードの3

ミュージカル女優北つかさのファンクラブ通称『ファミリア』で幹部をしている美千代が主人公。

ファミリアはいつも洋服さえ決まっていて統制のとれたファンクラブ。そこをちゃんと統率していることに喜びを感じていた美千代。

そこへ「アキ」という北つかさに似ている女性が新たに入ってきて規律が乱れ始める

このアキという女性は美千代の小学時代の同級生

美千代は小学生の時もかわいくて目をひく転校生尾上愛季が来てから修学旅行の表紙を絵のうまい明元むつみがすることになったり、密に好きだった男子が修学旅行で愛季に告白したり最終的には委員長の座も愛季に奪われてしまったりした経験がある。

今回もまた・・・

但し、このアキは実は転校生の尾上愛季ではなく、小学校の時に天然パーマでいじめられていた明元むつみだった・・・

みんなの中心でいたい。委員長でいたい。という女子クラスに一人はいましたねぇ(笑)

私は小学校の時はただただだらしない人間だったのでそんな風に中心に立つことすらできなかったですが、クラスを思いのまま動かせてるような錯覚を一度得てしまい、さらに中学・高校と世界が広がると中心に立つことができなくなってしまうと、こうやって小さなグループで気持ちよかった過去の栄光を再びってなるのはわからないでもないなーと思いました。

ハートの2

明元むつみが2章の主人公

小学校ではいじめられていたむつ美。住んでいる場所の関係で、中学はみんなとは違う中学に。

そこで演劇部の美術班に所属し演劇の舞台の装飾や小道具を作ることにやりがいを感じています

でも外見のことを気にして演技班との掛け持ちはどうしてもできません。

ある日同級生に誘われて家でみたビデオで年齢がそうかわらない北つかさに魅了されます。

またむつみには自分とは違い友達となかのよい弟がいました。弟はむつみが書いた絵を友達に自分が書いたといって見せていました。

ところが演劇部のポスターをみた弟の友達が、その弟の嘘に気づき、弟は責められ部屋にこもります。

全部お姉ちゃんのせいだ。絵を描いたのが自分ではなく姉だとばれた。しかもその姉のあたまが大仏みたいで・・・

そこでむつみは自分がいままでしてきたことは誰かの為にではなく全部自分の本当にしたいことをごまかしていたせいだと気づき、弟が「大仏みたいな髪」と笑われたからというのを理由にでも本当は「変わりたい」という強い気持ちで自分の頭の髪をはさみで切ってしまいます。

ダイヤの1

香北つかさが主人公。

夢組の準トップスターだったつかさ。

同じくその時の夢組の女役で今は大女優になっている沖乃原円が病気により引退するというニュースが流れます。円の生い立ちは複雑でちょっと破天荒で天然なところもありそんなエピソードのすべてがずるいと思っているつかさ。

自分の人気はすでに落ち目なので、円と同時に引退すればスコア旨は話題になるかもと引退のためのブログ記事を更新しようとしていたところ。マネージャーから連絡があり誰かにブログがのっとられて嘘の引退記事が載っていることを知らされます。

それを知らされた瞬間つかさは強くやめたくないと考えます。

まとめ

宝塚のトップ(本作では架空の劇団ってかいてあるけどまぁモデルは間違いなく宝塚)そしてそのファンそして新規のファンという構成自体は変わっているけど、内容は、過去の栄光が忘れられなかったり、他人のためという口実を作ってしまったり、圧倒的な主役に僻んだりというありふれた悩みからの脱出。

なので「わからないでもないなぁ」と思いながら読めます。

男性作家が、女性だったら味わったことがあるこういう感情を丁寧に過激にならずに書き上げているところがすごいなぁと感じました



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