がん消滅の罠 岩木一麻

内容(「BOOK」データベースより)

治るはずのないがんは、なぜ消滅したのか―余命半年の宣告を受けたがん患者が、生命保険の生前給付金を受け取ると、その直後、病巣がきれいに消え去ってしまう―。連続して起きるがん消失事件は奇跡か、陰謀か。医師・夏目とがん研究者・羽島が謎に挑む!医療本格ミステリー!2017年第15回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作。

著者について

岩木 一麻 (いわき かずま) プロフィール
1976年、埼玉県生まれ。2016年現在は千葉県在住。神戸大学大学院自然科学研究科修了。国立がん研究センター、放射線医学総合研究所で研究に従事。現在、医療系出版社に勤務。

あらすじ&感想

面白かった!

普通は誰がどうやって殺したかというのがミステリーだけど、今回はどうやって生かしたか?という活人事件ミステリー。

連続して発生した末期がん患者のガン細胞の消滅の謎を追うお話。

これがとてもよく考えられていてめちゃくちゃ面白かったです。

こっからネタバレあり

導入 ガンが消えるトリック 

導入部でいきなりガンが消えたトリックの話があります。

実はこの作品は岩木さんの処女作なのですが、最初に応募した作品がこのトリックを使った作品だったみたい。それを最初にドーンと出しちゃうところがすごい。

ある日、主人公の夏目が提案した療法を無視して信仰宗教に頼った女性の肺からガンが消えました。

ガンが消えた理由はわからないものの新興宗教の宣伝に使われてしまったことに憤りを感じる主人公に、友人羽島が突然肺がんが消えた理由に気づきます。

これは結局双子が入れ替わっていたというものでした。

なんだかこれならあり得そう。実際は難しいんだろうけどトリックとして単純でした。

10年前の話

次に話は10年前にさかのぼります。夏目は西條教授の最後の愛弟子。抗がん剤の研究をしています。

そして教授は、医師にはできず、医師にしかできず、そしてどんな医師にも成し遂げられなかったことをすると告げ辞職します

現在 宇垣と西條教授

10年後西條教授は湾岸医療センターの理事長に。そこには美人の宇垣外科医がいて、彼女は厚生労働省の柳沢という男のガン治療をしています。

また西條先生の亡くなった娘の体内に残っていたDNAの主を探し復讐したいと考えいてる西條先生のお手伝いもしています。

現在 小暮真理のガンの消滅

現在の夏目が働く日本がんセンター。

小暮真理という肺がん患者。転移をしていて新薬による治療を提案しているが末期がん。

リビングニーズ特約のある生命保険に加入しているということで書類を書きます

夏目は母子家庭で娘に障害がある小暮が末期がんであるという不運を感じながらもそれでもリビングニーズにより少しは救われることにほっとします。

ところがその後小暮真理のガンは消滅。

夏目の友人森川は生命保険会社で働いてます。

夏目の病院からまたリビングニーズ特約の支払いがあった後にがんが消滅したということを疑問の思った森川の部下である水島に夏目に話を聞いてほしいと頼まれ夏目に会うことに。

でに夏目は不正するような人間でもなく実際話を聞いても全く問題はなさそうです。

また小暮も同じく全く詐欺的要素はなさそうに見えます。

大体どうやってガンを発生させたり消滅させたりできるのか見当もつかず話あいは終わります。

で、そのあとどうやってガンを発生させそして消滅させたの謎が・・・。

がん消滅の二つのトリック

小暮真理と湾岸医療センターで行ってるがん治療(大物政治家等ばかり)の二つケースで怒っているがん消滅のトリックはそれぞれ違う目的と方法がとられていました。

小暮真理達には免疫力を下げて(アレルギーで通っていた小暮に免疫力を下げる薬を飲ませて)他人のガン細胞を注射で注入しリビングニーズ保険がおりたら免疫を下げる薬を止めることにより他人のガン細胞に対する拒否反応によってがん細胞を消滅させていた。

そうやって保険金を受け取ることで、経済的援助とは違った一度死を見つめたうえで生き延びかつお金を得るという形をとることでいい形で保険金を活用させるいわゆる救済のためのガン。

で、それとは別に湾岸医療センターではガンではない良性の腫瘍等からガンを培養しその細胞を戻すことで末期がんを作り、なおすかわりに色々政治的要求(例えば薬の承認を早めるなど)をしていました。こちらのガン消滅はがん細胞に時限的自殺するように培養されていたため消滅していました。

つまりこっちの流れはこんな感じ

  1. 柳沢のような使える人の初期がんもしくは良性腫瘍を手術で切り取る
  2. 切除したがん細胞を培養しガンにして戻す。
  3. この培養したがん細胞は、ポナステロンAを投与したら勝手に消滅する
  4. なので末期がんから完全消滅まで思いのまま
  5. 他の病院では治すこともできないので役人たちは湾岸医療センターの要求を呑む

西條の復讐

がん消滅だけでもちゃんとした話になってるのですが、彼の娘を殺した男への復讐もちゃんと解決しています。

こちらはDNAから犯人を捜していたので乱暴されたときの精液だと思っていてそれを苦に自殺したのだと思っていたのですが、実際は妊娠したときの異常による(胞状奇胎)からのガンによる死亡で、相手は乱暴されたわけではなく恋人でした。

しかもその恋人は彼女の妊娠も知らないままだったので恋人(これが実は羽島世間狭い)には非はなかったようです。

じゃあ西條の復讐って?となったのですが、実はその娘を殺した犯人のDNAを調べる次いでに調べたことで西條は自分と娘に血縁関係がないことを知ってしまいます。

その不倫相手である事務長を自分にみせかけて殺してました。

(えええ、ややこしい)

しかも妻の不倫は自分が学生のころに精子バンクに精子を提供していたことがあると告白したことがきっかけだったらしくその精子バンクで生まれたのが宇垣さんだったというおちまで

つながりすぎww

世間狭すぎ。



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