【その言葉を検索したら】モダンタイムス 伊坂幸太郎

今日の一冊

内容(「BOOK」データベースより)

恐妻家のシステムエンジニア・渡辺拓海が請け負った仕事は、ある出会い系サイトの仕様変更だった。けれどもそのプログラムには不明な点が多く、発注元すら分からない。そんな中、プロジェクトメンバーの上司や同僚のもとを次々に不幸が襲う。彼らは皆、ある複数のキーワードを同時に検索していたのだった。

著者について

伊坂 幸太郎
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。2004年、『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞、短編「死神の精度」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。2008年、『ゴールデンスランバー』で本屋大賞、山本周五郎賞を受賞。ほかの著書に、『あるキング』『SOSの猿』『オー!ファーザー』『バイバイ、ブラックバード』『マリアビートル』などがある。

あらすじ

物語は、突然始まります。

怖いお兄さん岡本猛に、いきなり脅される主人公。
理由はどうやら妻に浮気を疑われたかららしい。
この妻、文字通りの「恐妻」。
主人公の前にも2度ほど結婚しているらしいが、一人は死んで一人は行方不明。理由は「浮気したから」

会社に行くと、今度は絵に描いたような最悪な上司が新たな仕事をもってくる。

「画面に項目をたすだけ」と仕事内容は簡単なのに、先輩社員の五反田正臣が逃げ出してしまったらしい。

仕方なく、大石倉之助と工藤君と一緒にその謎の仕事に取り掛かろうとするが、取引先の会社と連絡を取ることもできず途方にくれる。

しかも、プログラムソースをみてみるとどうやらある検索をしてこのページに来た人を監視してるらしいことがわかるそしてその検索をしたものは次々悲劇に遭遇し・・・

感想

伊坂さんは国家対個人の作品が好き。

大きな組織に対して小さい個人がいかに流されず、立ち向かい、そして逃げればいいのかっていうテーマがとっても多い。

今回は国家の秘密をたくさんしった渡辺はすべてを知らないふりをして田舎で情報を絶った生活をすることで国家からの攻撃を避ける。という選択をとる

将来伊坂作品が検閲対象になったら私もこの国から逃げようと思います。

そのほかの感想をテーマ別で。

いつも通りの脱線(いい意味で)

伊坂さんは(あ、ちなみにこの本には女ったらしで軽い井坂幸太郎という作家が登場しますよ)、普段思った疑問はちょっとした知識をふざけた文章の中にすべりこませるのが本当に上手

今回も「電車や店内で普通に会話してても気にならないのに携帯で話してるとイライラするのはなぜ(ペースメーカーの件をぬきにして)」とかは「なるほど」って思いました。

伏線


全体的な話の流れは一見関係のなさそうないろいろなことが最後に繋がっていくってのはいつも通りでした。
ただ、今回は回収されなかった謎もたくさんあるのでそれを不満に思う人も多いかも。
特に、不倫相手の存在。あの人一体なんだったの?
妻に関しては、職業に関しては夫に報告してる通りで間違いないんじゃないかなぁ。

キャラクター

どのキャラクターも憎めないのは、伊坂作品の特徴だと思います。
今回も、あ、若干2名ほどいやなやついましたが、それを除いてみんないいキャラだなーっと思いました。怖い兄さんの岡本猛の安否とかわりと本気で心配してました。

全体のテーマ

「検索」

2010年に読んだ時は、『監視していたらっと思うと怖いなーっと思うと同時に、検索を監視することができたら、広告や犯罪などに役立つと思うので近い将来秘密裏に行われるかもしれないなっとも思った。とメモ書きしてるのですが広告などにはもう普通に活用されてますね。

「魔王」
この作品、敵がどこにあるのかが分からないのが怖い
魔王の時にも感じたけど、自分の考えで行動してると思っているのに結局私も大きな流れに流されてるだけなんだろうなっと思うと怖くなる

それもこれも「そういうことになってる」ということなんだろうか。まさに「魔王」が敵。
でも、大きい流れを変えることはできないけど、『大きな目的ではなく小さな目的に照準を変え目の前の倒れている人を助けることからはじめる』ことが結局大きな流れを変えることになると私は信じたいな

それでさえ予定されたものならもうお手上げだけど。

今回はいい意味でも悪い意味でも伊坂さんの主張や考えが存分に盛り込まれた作品になってると思います。

好きな言葉

「結婚とは、一に我慢、二に辛抱、三、四がなくて五にサバイバル

「わたしはね、誰もが善人であるべきとは思わないし、
 悪いことをするのもアリだと思うけど、
 思い悩まない人が一番嫌いなの」

人生を楽しむためには、勇気と想像力とちょっぴりのお金があればいい。」

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伊坂作品 国家対個人



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