【集団心理の怖さ】 火星に住むつもりかい? 伊坂幸太郎

今日の一冊

あらすじ

今年の「安全地区」に指定された仙台が舞台。

安全地区に指定された地域では、住民同士が監視しあい、テロ等を起こす可能性がある人物を平和警察に密告することが義務付けられている。

そして密告された人物は平和警察による取り調べを受け、危険人物とされた場合は皆が見ている広場でギロチンにより公開処刑される。

この制度により確かに犯罪発生率は低下しているが・・・。

実際は平和警察の取り調べは単なる虐待。

一度疑われたら魔女狩りと同じ、死ぬまで自供しろと虐待される。

虐待に負けて自供したらギロチンにより死刑

虐待を受けても自供しなかったら激しい虐待によりどのみち殺される

(その場合はその死は隠蔽される)

本当にテロ犯かどうかなんてどうでもよく、ただただ毎日虐待できる喜びをかみしめている平和警察

そんな時平和警察に捕まった人間を救うヒーローが現れた。

彼はある一定の人物のみを平和警察から救っているようだ。

その共通点とは?

過去に宝くじが当たって困ってる人にお金をあげたら「私も」「俺も」と殺到し最終的に「偽善者」呼ばわりされて死んだ祖父、病院で火事が起こり同室の人間を全員助けようとして亡くなった父をもつ床屋のおやじがヒーローの正体。

全員を救うヒーローにはなれない。

そのせいで祖父も父も死んでしまった。

だから自分は自分の床屋にきたことのあるお客だけを救うヒーローになろうと考えたのが始まりだった。

お客としてきていた大学生が研究室から持ち出した強力な磁石を武器に戦うヒーローとなっていたのだ。

広場で刑の執行がされる日もヒーローはお客である男を救いに来た。

絶対絶命のピンチの中なんとか助けるも、自分がヒーローであるとばれてしまう。

それこそテロとみなされつかまりそうだが、組織はそのすべてを組織のなかでの出る杭だった男に罪をかぶせその男を失脚させることにしたため彼はおとがめなしとなる。

そして平和警察はこれから新たな転換点を見つけるであろうことを示唆して話は終わる。

感想

広場で見せしめの処刑なんて今の日本ではちょっと想像できないけど実際犯罪防止のために行ってる国もあって、そういう国では軽犯罪はものすごく少ないと聞いたことがあり、そう思うと全くの空想物語でもないところが怖かったです。

平和警察で犯罪者の可能性がある人物を執拗に痛めつけるサドな警察官ももちろん怖かったですが、単に「この人なんか好きじゃない」と近所の人を密告する主婦や、自分の職務を特に疑うことなく淡々と虐待する二瓶が一番怖かったなぁ。

後、内部の人間でも出る杭は抜いておくことにした組織も怖い。

この本はこんな人におすすめ

  • ディストピア小説が好きな方
  • 集団心理の怖さがテーマの小説が読みたい方



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