今日の一冊
内容(「BOOK」データベースより)
娘を殺された山野辺夫妻は、逮捕されながら無罪判決を受けた犯人の本城への復讐を計画していた。そこへ人間の死の可否を判定する“死神”の千葉がやってきた。千葉は夫妻と共に本城を追うが―。展開の読めないエンターテインメントでありながら、死に対峙した人間の弱さと強さを浮き彫りにする傑作長編。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
伊坂/幸太郎
1971(昭和46)年、千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、作家デビュー。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞を、「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
あらすじ
死神「千葉」が結局ほぼ全員に「死」という判定をしているのに全然憎めなくてやりとりがおもしろかった前作の死神の精度とはかなり趣向の違う作品。
千葉は調査対象を7日間調査し、調査の結果「可」もしくは「見送り」の判定をするという仕事をしている死神。
他の死神に比べるとちゃんと調査をしているけれどまぁ特段問題がない場合は大体結果は「可」になっている。
今回の調査対象は山野辺。作家である山野辺夫妻の子供はサイコパスで良心を持たない男本城に殺されていた。
夫妻は彼を自分たちの手でさばきたいと思い、目撃者等に協力してもらいあえて彼を無罪にし彼を殺すために行動する。
ところがサイコパスの本城は頭がよく少しずつ先回りされる。
千葉の同僚香川(つまり死神)は本城についていたが、香川によると「情報部の死亡数調整のための見送りキャンペーンを使って本城を20年の延命保証をした」という・・つまりはこの復讐劇は最後には本城が勝ってしまうのか??
ネタバレ
本城は死なないということが途中でわかり絶望しながら続んでいたのですが、山野辺は最後千葉と一緒に自転車で車で走る本城を追い詰め彼を最後にはダムに落とすことに成功します
山野辺は本城の死を確信し妻に報告し、その後、事故から子供を救い死亡(つまり千葉は可の判定により)
そしてダムに落ちた本城。
死ぬのはおかしい(延命保証してるし)と思ったらダムに落ちた本城は骨折しガラスがつきささったままダムの水底に沈むもなぜかそこで死ねず(延命保証により)20年間そこで苦しみながら生き続けてるらしい。たった一人で
自己顕示欲が強い彼には最高の復讐
最高の復讐といえばダムに落ちる瞬間、山野辺が「お前誰だっけ??」と本城言うのだけどこれも最高の復讐。
最後千葉は別の仕事で山野辺の奥さんを見かける。
奥さんの同僚が山野辺氏の本を読んでおり「初期の本がよかったそうですね」と千葉にいうと千葉が「そうらしいな。だが晩年もよかった」と答えるところで終わるんだけど、晩年本は出ていないのできっとこの山野辺の最後の7日間の復讐劇をいってるんだろう
確かに彼の晩年作は最高によかった。
感想
死神とサイコパスが登場しなおかつ主人公は子供が殺されてる上に死神によって7日後にはきっと死んでしまうであろうことがわかりながら(死神の千葉は大体「可」の判定をするから)読んでいるにもかかわらず読むのが辛いという部分はほぼなく、時にはぷっとふきだしそうになりながら読むことができたのは伊坂さんの作品ならでは。
伊坂作品は、どっか抜けてるようで飄々としててでもいいやつという
キャラクター作りが上手くて今回は荻沼くんにすっかり魅了されました。
うんちくに使えそうなネタも今回もふんだん。
好きな言葉
「穏やかな時間が長く続くことに、人間は耐えられない。集団はそのうち、『何か面白いことはないのか』と嘆きはじめる」
人間は「平和であることに退屈や不安を感じ、そして争いや戦争が起き」と死神は思っていて、その死神目線でみると今ちょうどこの退屈や不安を感じ始めてるという状況にみえてるんじゃないかって思えて怖くなります
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