今日の一冊
内容紹介
「この頃ボクは文ちゃんがお菓子なら頭から食べてしまいたい位可愛い気がします」
――芥川龍之介
文豪が綴った、甘く切なくどこか愛おしい、恋の手紙
芥川龍之介が後の妻・文に送ったラブレターの一節は、思わず赤面してしまうくらい恥ずかしく、
それでいて恋する心情が伝わってくる「生っぽい」文章です。
かの文豪たちも、ラブレターともなると、その人自身のパーソナリティが色濃く反映されてしまうもの。
本書は、中島敦、太宰治、谷崎潤一郎、夏目漱石、森鴎外など、あの文豪たちが
実際に書いたラブレターを、当時の状況と解説とともに掲載した一冊です。
感想
文豪たちのラブレターということで、どんな素敵な言葉が紡がれているのかと期待したら裏切られました。
面白い。
ということでいくつかお気に入りを紹介。
芥川龍之介
後に結婚した8歳年下の文ちゃんへ
「この頃ボクは文ちゃんがお菓子なら頭から食べてしまいたい位可愛い気がします♪(実際は♪はついてないけど)」
って私が芥川龍之介なら天国で恥ずかしすぎてもう一度死んでるわ…。
「その理由は僕は文ちゃんが好きだと云うことです。」
あのお顔でこんなこと書いてくるなんてかわいい。
樋口一葉
あこがれていてそして恋していた半井桃水(小説担当の記者)へ
「いずれにしても男女の別さえなければこのような嫌なことを言われるず~」
樋口一葉さんのラブレターは切ない。
国木田独歩
後の妻信子へ
「信子よ起てよ。奮えよ。決死せよ」
親に反対されている信子をたきつける手紙。
こんなラブレターを送っておいてすぐ破局するという。
谷崎潤一郎
この人の恋愛遍歴がまずヤバい。
初代に求婚したらだめだったので妹千代と結婚。
でもやっぱりもう一人の妹のせい子(痴人の愛のモデル)がいいなぁってことで、千代は佐藤春夫に譲渡(細君譲渡事件。しかも1度はその約束も翻したりとクズ)
そしてその後 丁美子と結婚するも離婚
さらに最後は人妻に恋をして不倫からの3度目の結婚。
手紙はその3度目の結婚相手根津松子へ
あなたの支配の下に立ちたい
今日からご主人様と呼ばしていただきます
たった一言「許してやる」とだけ仰ってくださいまし
はい変態。
倉田百山
ファンの山本久子へ
私の舌は、あなたの可愛い鋭い糸切り歯を、痛い、甘い感覚で覚えてしまいました。
百三が45歳で久子17歳。
最初の手紙では私はあなたにセックスを求めません。キスも握手もなくていいのです。といっておきながら・・・。
こちらも変態。
太宰治
- 田部シメ子 バーの接客嬢 無理心中の末、シメ子のみ死亡
- 小山初代 芸者 同棲後無理心中未遂
- 津島美智子 妻 3人の子供をもうける
- 太田静子 愛人 子ども産ませる認知はする
- 山崎富栄 愛人 太宰治と心中
2人とすでに心中未遂をしていて、もちろん妻もいる太宰治が愛人静子へあてた手紙
差出人の名を変えましょう。
小田静夫、どうでしょうか。美少年らしい。
私は中村貞子になるつもり
愛人もつくりなれてくるとちゃっかり差出人の名前を変えさせたりするらしい。ゲスい。
よくお考えになってください。
私はあなた次第です。(赤ちゃんのことも)
このあたりもゲス〜
この後静子は子どもを産むもその時すでに太宰の気持ちは富栄にうつっちゃってるんですよねぇ
本当もう・・・
そしてこの時の静子の日記をもとにして斜陽がうまれているらしいのでちゃっかりしてる。
夏目漱石
堅物の夏目漱石がイギリス留学中に妻の鏡子に書いたラブレター
おれの様な不人情なものでもしきりに御前が恋しい。これだけは奇特といって褒めて貰わなければならぬ。
100通を超える手紙で唯一かかれた恋しい。
なにそれキュンとする。
森鴎外
舞姫のエリスのモデルとなったドイツ人へのラブレターではなく(そちらはすべて破棄されてしまってるらしい残念)
年下の妻へのラブレター
只今手紙がきたが日付がない(中略)。手紙には日付をするものだよ。
お前さんは歌なんぞは分からせようとは思わない人だからだめだけれど、ついでだから書くよ
わが跡をふみもとめても来んといふ遠妻あるを誰とかは寝ん
追っかけて来ようというような親切に言ってくれるおまえさんがあるのに外のものにかかりあっているものかとう意味なのだよ。
歌といふものは上手にはなかなかなれないが一寸やると面白いものだよ。なにか一つ歌にして書いておこしてごらん、直してやるから。
上から目線だけど実はデレデレでこれはこれでよいです。
まとめ
不倫したら国民総出で叩かれる現在と違い、みんな自由すぎる。
文章も全然綺麗ではなく、
となりました。
職業としての作家のすごさが逆に分かるというか‥。
私のお気に入りは
普段堅物な夏目漱石のラブレターと芥川龍之介のラブレターかなぁ
他にも堀辰雄が「風立ちぬ」を書くきっかけとなった矢野綾子へのラブレターなど盛りだくさんでした。
普段こんなラブレター書く人がよくあんな本書くことができたな