今日の一冊
内容(「BOOK」データベースより)
美しい妻は絶対的な存在。楚々とした義妹は代表作の原点。そして義息の若い嫁は、新たな刺激を与えてくれる…。大作家をとりまく魅惑的な三人の女たち。嫉妬と葛藤が渦巻くなか、翻弄される男の目に映っているものは―。文豪「谷崎潤一郎」を題材に、桐野夏生が織りなす物語世界から炙り出される人間たちの「業」と「欲」。
著者について
桐野夏生
一九五一年、金沢市生まれ。成蹊大学卒。九三年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、九八年『OUT』で日本推理作家協会賞、九九年『柔らかな頬』で直木賞、二〇〇三年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、〇四年『残虐記』で柴田錬三郎賞、〇五年『魂萌え! 』で婦人公論文芸賞、〇八年『東京島』で谷崎潤一郎賞、〇九年『女神記』で紫式部文学賞、一〇年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、一一年同作で読売文学賞を受賞。他の著書に『ポリティコン』『緑の毒』『ハピネス』など多数。
あらすじと感想
文豪谷崎潤一郎が細雪を書いた頃から晩年までを細雪のモデルとされる谷崎潤一郎の3番目の妻松子の妹重子目線で書かれた作品。
3番目の妻以降、彼の作品のモデルにもなった①妻松子と②妻の妹重子と③義理の娘千萬子3人のギリギリ地雷を踏まずにそれぞれが彼のそばにいるというお話。
①松子は妻という座なので基本はどっしり構えている。自分の妹重子が作品の主人公になっても重子はその辺わきまえているので大丈夫。でも千萬子と夫との手紙のやり取りはさすがに…。
②重子は姉松子が太陽だとすれば自分は月だと思っている。細雪が自分がモデルとして書かれたものであることを誇りに思っている。
③千萬子はその若さで谷崎をほんろうさせている。松子と重子は千萬子がいることで自分たちはもう谷崎にとって用なしとなったのではないかと考えるように
でも最後は谷崎は千萬子とは今後合わないと重子に土下座し、自分の作品には貴方が必要と言わせて、そしてなくなっていくという話です。
もちろん実際は桐野夏生さんが書いているのですが、あまりにも心情描写がうまくて重子が実際に書いたものと錯覚して読むことが出来ちゃいます。
どこまでが本当なのかもわからないくらい
後、谷崎一家も嫁の実家も重子の夫も千萬子の実家もみんなお金もちなので戦争中もわりと優雅です。
そして戦後もずーっと。
とういうかこの貴族のような暮らしができたからこそ長く皆で一人の男性をめぐってわちゃわちゃできたんだろうななんて思いました。
- 恋人だった芸者のに振られたのでその妹(千代)と結婚
- そしてさらに千代の妹(三千子)にも手をだす ⇒『痴人の愛』
- 妻(千代)は自分の友人の佐藤春夫に譲渡
- でも、実際佐藤のところに妻が行くと惜しくなり譲渡撤回
- 2度目結婚(丁美子)
- でもその後人妻と不倫(松子)し3度目の結婚 ⇒『春琴抄』
- 松子の妹重子も気になる ⇒『細雪』
- 松子と前の夫との間に産まれた子どもで重子の養子となっていた子どもの妻(千満子)に入れあげる ⇒『瘋癲老人日記』
ちゃっかり自分の恋愛を名作にしてるところがコスパいい生き方笑