霧をはらう 雫井脩介

霧をはらう

著者について

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気! 』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。 –このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。

ネタバレ&感想

小児科で突然起きた点滴による死亡事件。

容疑者として捕まったのは亡くなった子供2人と同じ病室に入院していていて同じようにインスリンが点滴され体調が悪くなるも生き残った少女の母親小南野々花だった。

野々花は容疑をいったん認めたが今は否認している。

野々花は本当に殺してない?それとも?

主人公の伊豆原が彼女の無罪をかちとるために奮闘するという話。

冤罪事件を取り扱った小説を今まで何冊か読んだことがあるけれど、今までの冤罪小説は無実なのに捕まってしまった人はすごく運は悪いけどいい人 なんなら人が良すぎて捕まってしまったみたいな感じだったのですが、野々花はなんというか結構癖のある性格。

空気読めなくて頑固でなんというか子供が入院しているという心の余裕がないなかで同室がこの人だったらやだなって人。

喘息で入院しているのにソファーにこぼしたクッキーはたいて埃たてたり、医者でもないのに乾布摩擦したらいいよとか子供に吹き込んだりして、なによりそれを注意しても全く反省しないというか響かないところが…。

ということで、悪い人ではないんだけど‥。ってことで弁護士もそして長女も(入院してた子は次女)彼女の無実を信じきれない感じで話しが進みます

私自身も小説的にはこの人犯人じゃないんだろうけど‥。いまいちこの人がかわいそうとも思えなくてある意味フラットな感じで事件を追うことができました。

さらに、展開も2時間ドラマのようにパッとした展開がなく、確実に白であることがわかるような証拠というよりはちょっとずつ証言を組み合わせて「だから彼女には犯行は無理だった」という結論に持っていくような感じ。

読んでいて続きがきになって・・・というタイプの小説というよりは実際の仕事はこんな感じなのかもなぁーという展開です。

ただ、犯人がわかってから怒涛の展開。

ここからネタバレ

まず、この事件を伊豆原が担当するようになった経緯は、ある有名な弁護士さんがこの事件を担当していたけれど体調を崩して(末期のガン)別の弁護士に引き継がれた、そしてその弁護士のお手伝いという形で伊豆原が入ります。

で、真犯人はこのもともとの担当弁護士が懇意にしていた女性の娘。自分の娘のように感じていた子を犯人にはしたくない、なので野々花を無罪にはしたくないが死刑にはならないようにということで引き受けていたのです。

なので伊豆原以外の二人の弁護士はこの裁判は無罪ではなく死刑ではない判決で落ち着かせようとしてたんです。

ここが多分落ち。

真犯人は妊娠中もいじめで残業ばっかり入れられたせいで流産してしまった看護師さんでした。

とにかくやってもない犯罪は自白するものじゃないなというのと

子供が犯罪を犯した時は実際に罪として裁かれることがなかったとしても親の育て方がそこにまったく影響を与えなかったかとなるとそんな風に思えないと思うんだけど

親が犯罪を犯してもその責任は子供にはまったくないのだから子供はどうかそういう目が届かないようにうまく名前とかかえたりとかして生きていけるように保護してあげてほしいなと思いました。



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