【村社会怖い】水底フェスタ  辻村深月

今日の一冊

内容(「BOOK」データベースより)

湖畔の村に彼女が帰ってきた。東京に出て芸能界で成功した由貴美。ロックフェスの夜に彼女と出会った高校生・広海はその謎めいた魅力に囚われ、恋に落ちた。だが、ある夜、彼女は言う、自分はこの村に復讐するために帰ってきたのだと。村の秘密と美しい女の嘘が引き起こす悲劇。あまりに脆く切ない、恋の物語。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

辻村/深月
1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

あらすじ

 村長の息子(広海)と村に帰ってきた芸能人(由貴美)とのはかない恋と村の絶望的な閉鎖性をテーマにした小説。

以下ネタバレ。

広海に近づいてきた由貴美は「村の不正選挙の証拠」をマスコミに売ることで、「母を自殺に追い込み、そしてそれを隠蔽した村」に復讐したいと告白する。

彼女に恋をした広海は由貴美のため、そしていくつかの家庭で代々村長を持ち回りしていて現在は広海の父がこの村の村長のため父の潔白を証明するため村についていろいろ調べる。

すると

  • 村の選挙不正は本当。4つの家で代々村長職を回していたのはお金の力だった
  • 由貴美の母は自分の父の愛人で、どこにでもいる普通の専業主婦だと思っていた自分の母が彼女の母を自殺に追い込んでいた
  • そもそも由貴美は父との子かもしれない(つまり自分と異母兄弟)

という衝撃の事実が判明する

さらに由貴美に異様に会いたがっていた建設会社社長のドラ息子達哉を由貴美が殺害してしまうという事件までとここまでくると恋愛から2時間もののサスペンスドラマぽくなってきますが、この小説の怖いところは、そんな二人の動向のすべてが村中に筒抜けで気持ち悪いくらい二人が監視されているというところ

途中で死人がでても建設会社と村がこれからもうまくやっていくために、村ぐるみで隠蔽されます。

最後には2人は逃げるように村を出ようとしますができず二人は飛び降り心中を図ります。

けれど広海だけ助かります。

目を覚ました広海は今度こそ村の不正の証拠をもって、由貴美に「村のスキャンダルをうることでもう一度芸能人として売れよう」とそそのかした男(会社と村を引き離そうとしていた達哉の兄)の元へ会いに行くところで物語は終わり

感想

広海は同級生の中ではしっかりしていてクールで賢いというポジションで描かれていますが芸能人なんて興味ないというふりをしておきながらちょっと誘惑されるとすぐ恋に落ちるあたり普通の高校生なんだろうなぁ

村のせいで心中までしてしまったけど、場所が違えば普通の平凡な恋だったんだろうそういう意味では恋愛小説。

でも

 フィクションだけど村社会怖い。特に主人公のお父さんが怖すぎる

村に愛人を作り息子の犯罪にもいつもの穏やかさで丸く収めるお父さん怖ーーこの辺は完全ホラー。

後、達哉が執拗以上に由貴美を追いかけていたのは、どうせひどいことをするつもりだったのだろうと思いながら読んでいたので、実は兄から村の不正などの話を聞いていて、このままでは兄と由貴美のせいで村がダメになり友達の広海が好きなフェスもなくなってしまうと思いそれを阻止しようとしてたという事実を知り彼の人生が不憫すぎるとなった

 この本はこんな本です♪

  • やっぱり友情より恋愛というか性欲
  • 村社会怖い

という後味の悪さを楽しむ小説



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