灰の劇場 恩田陸

内容

【内容紹介】
大学の同級生の二人の女性は一緒に住み、そして、一緒に飛び降りた――。
いま、「三面記事」から「物語」がはじまる。
きっかけは「私」が小説家としてデビューした頃に遡る。それは、ごくごく短い記事だった。
一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたというものである。
様々な「なぜ」が「私」の脳裏を駆け巡る。しかし当時、「私」は記事を切り取っておかなかった。そしてその記事は、「私」の中でずっと「棘」として刺さったままとなっていた。
ある日「私」は、担当編集者から一枚のプリントを渡される。「見つかりました」――彼が差し出してきたのは、一九九四年九月二十五日(朝刊)の新聞記事のコピー。ずっと記憶の中にだけあった記事……記号の二人。
次第に「私の日常」は、二人の女性の「人生」に侵食されていく。
新たなる恩田陸ワールド、開幕!

あらすじ&感想

この間読んだ小説も小説の中で小説家が小説を書いているというていのお話だったんだけど今回もそういう内容だった 流行り??

ただ、鳩の撃退法では作家自体も架空の人物で完全フィクションだったんだけど、今回は作家は恩田陸さんそのもので、なので半分小説半分エッセイのような話。

恩田陸さん自身が小説家になったくらいのころに読んだ「大学の時の同級生の二人が飛び降り自殺した」という記事をもとにかかれた小説になっています。

20年近く前の記事を本にしている形。

でも小説にしているとはいえ謎は謎なまんまで正解があるわけでもなくてなのでエッセイ色強めかなぁ。

小さい頃何気なく考えていたのに今はすっかり忘れてしまっていることや、普段から思っているけどうまく言語化できないことを作家というプロの人の手によって言語化されている

というのがとても好きで、恩田陸さんは特にそれが多くて毎回うれしくなる。

今回も、小さい頃私も親と喧嘩した程度で2階から飛び降りてやる(しかもすごく低くて目の前に屋根のある安全な位置で考えていた)と考えてお母さんがあとでうんと悲しむような遺書を書こうとしたことがあったことをこの本を読んでいて急に思い出した。

懐かしい・・。

で、話は本題。

ものすごく悲しいことや辛いことがあったときはそれこそ人は死にたいと思ったり思いっきり泣いたりできると思うのですが、そうではない漠然とした不安や悲しみや寂しさって案外泣けないし死ねない気がします。

だからこそ普通に生活できちゃう。

でもそこに何か一滴いつもと違う出来事が起これば、それは悲しみとかとは別の勘定で無理だーってなっちゃう気がします。

二人の間に何があったかは知る由もないですが、そういう気持ちだったかもしれないという作家の考えにはすごく納得しちゃいました。

すごく納得しちゃいすぎて顔が見えない二人が家を出て鍵をかける?とか話しながら死ぬ場所まで普通に歩いていく姿が見えちゃいそうでなかなかリアリティあふれる本でした。



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