52ヘルツのクジラたち 町田そのこ

内容(「BOOK」データベースより)

52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる―。

著者について

町田そのこ
1980年生まれ。福岡県在住。 「カルメーンの青い魚」で、第十五回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。2017年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュ。他に『ぎょらん』(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)がある。

あらすじ

主人公の貴瑚。海のある小さな町に引っ越してきた。ここではよそ者は目立つ。どうやら 貴瑚 もあることないこと噂されているようだ。

貴瑚 がこの町に引っ越してくる前、 貴瑚 は母親からずっと虐待を受けていた。義父と母との子供である弟とは全く違う存在として育てられ、今は脳梗塞で倒れた義父の介護を一人でみていた。

介護している義父からも毎日のようにののしられそれこそボロボロになっていたある日、高校時代の友人に再会する。そして友人は友人の同僚のアンさんという男性と一緒に 貴瑚 のことを家族から引き離してくれた。

それから徐々にゆっくり回復していった 貴瑚 は今一人で海のそばで暮らしている。

そこで、ある日自分の母は祖父から「ムシ」とよばれている話すことができない少年に出会う。

貴瑚 は彼のことを救い出したいと思い・・・・

ここからネタバレ

少し戻り海の町で過ごすことになった理由。

それは元の元気を取り戻した 貴瑚 が助け出してくれたアンさんとは違う別の男性と恋におちることから始まる。

始まりはとても素敵だった彼だが彼は政略結婚で別の女性と結婚が決まる。それでも彼女のことはかこっておきたくてようは愛人であってほしいと 貴瑚 にお願いする。

そんな状態に気づいたアンさんは必至で止めようとする。

そして激怒した彼とアンさんが対立するようになり、彼はアンさんが実は体は女性であることを知り、アンさんの実家にクレームをいれ、その後アンさんが自殺してしまう。

貴瑚 はこうなったのはすべて自分のせいだと思いそれが理由で海の町にやってきていた。

少年のその後

少年は 貴瑚 と暮らしたがったし 貴瑚 もまた彼のそばにいてあげたいと考えていた

が、それは現実的ではない。ただあと数年したらそういう権利も与えられるしそこでまだ一緒に暮らしたいという気持ちがあれば一緒に暮らせばいいという良識的な意見ができる親戚に出会いそこに少年を託すことができた。

少年の母は男とどっかに逃げていて、祖父は娘がいなくなったショックで一時は少年さえ戻ってきたら娘も戻ってくると思い騒ぎたてたがそれも無理とわかり急速に認知症が悪化する

52ヘルツのクジラとは

他の鯨と違い高い52ヘルツの声のためどのクジラにもその声が聞こえずすぐそばに仲間がいたとしても声が届かない、世界で最も孤独なクジラ

今も毎年確認されているらしい

主人公や少年だけでなくもう手遅れになってからわかる声の届かない虐待の声もまた52ヘルツのクジラと同じということがこの小説のテーマとなっていました。

そして体と心の姓が違うことに苦しんでいたアンさんもまた・・・

どうでもいいですがこの小説の舞台となった大分の海の町。

いいところより田舎の悪いところがふんだんに描かれてますが、でもこういう田舎町ちょっといいなぁ住んでみたいなってなってました。

近くに海があってなにかあったら海を見に行くって素敵だなぁっと。

それにしても題名にもある52ヘルツのクジラ。初めて知りましたがその題材と虐待を受けている子供たちの届かない声が本当にうまくリンクしてて素晴らしい小説でした。



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