【もうすぐ小惑星が衝突する】終末のフール 伊坂幸太郎

今日の一冊

内容(「BOOK」データベースより)

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?今日を生きることの意味を知る物語。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

伊坂/幸太郎
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年「オーデュポンの祈り」で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。04年「アヒルと鴨のコインロッカー」で第25回吉川英治文学新人賞、短編「死神の精度」で第56回日本推理作家協会賞(短編部門)、08年「ゴールデンスランバー」で第5回本屋大賞・第21回山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

あらすじ&感想

「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されてから5年後のお話。ネタバレあり

終末のフール

香取夫妻の夫が主人公。

ずっと折り合いの悪かった娘の康子が10年ぶりに帰ってくる

康子が父を嫌う理由は父が昔からすぐに周囲の人間をバカだと罵るから。

康子の兄は勉強こそできなかったが、とてもユニークな発想ができる才能に恵まれていたにもかかわらず父は彼をバカにし、彼が最終的に自殺したことでその才能に気づき兄を尊敬していた康子との関係は壊滅的に悪くなっていた。

そんな二人の仲を取り持つため母が二人を会わせることに、最初はぎくしゃくしていたが、兄の思い出を通して二人の間にあったわだかまりは少しずつ溶けていき和解

翌日東京に帰る康子は父に自分と同じように父に失望した母にも謝るように忠告して終わる。

確かに現実的に考えて息子をバカにしていた夫のことを誰よりも恨んでいてるのは母だろうな。

太陽のシール

桜庭富士夫夫妻が主人公 

ずっと子供が欲しくてもできなかった桜庭夫妻に子供ができる。

でももちろん惑星が近づいて生きているので、産まれてきても3年しか生きることができないこ

子供を産むことが正しいのかそうでないのか悩む主人公。

しかし、先天性の病気を患う息子がいる同級生が、今まで自分たちが死んだらこの子の面倒はどうしたらいいのだろうとずっと悩んでいたが今は3人一緒に死ねることがわかってうれしいと話すのを聞き、産んで欲しいと妻に伝える。

その後病院で検査すると、なんと双子を妊娠していることが発覚しておわり

籠城のビール

立てこもり事件の人質となった妹の暁子は無事救出されるも美人すぎてメディアに連日取り上げられ、加熱する報道の中でおこった暁子に対する誹謗中傷を苦に自殺した。

兄の虎一と弟の辰二はその誹謗中傷が起こる原因となった元アナウンサー杉田玄白の家を復讐のため訪れる

警察が突入のタイミングをはかるような緊迫な状況になってもなお杉田家は食事をしたりとどこかのんびりしていて、全く反省していない態度に兄弟はさらに苛立ちを募らせる

ところが真相は、事件後心を痛めていた杉田自身、暁子が自殺した命日でもある今日家族で毒入りの食事を食べて自殺しようとしていた

それを聞いた虎一は復讐をやめ償うためにも地球滅亡の日まで生きて欲しいと杉田に言う

すでに外には通報を受けた警察がいるため虎一達は自首しに行こうとするが、杉田からもらった段ボールに入り荷物として外に運びだされ 捕まることなく無事脱出する

冬眠のガール

両親を失くした美智が主人公

 美智は父親が残した本を毎日読み、四年間かけて二千冊読んですごしていた

美智は『両親を恨まない』『父親の本を全部読む』『死なない』の3つを目標しいたが、富士夫の話を聞きさらに『恋人を作る』を目標に加えます

美智は本にかいていた『新しいことをはじめるには、三人の人に意見を聞きなさい。尊敬している人、自分には理解できない人、そして新しく出会う人と書いてあることを思い出し、まず尊敬している相手、高校の同級生である太田隆太の家へいく

隆太は子供を助けるために車に轢かれて亡くなったことを知る。

次に訪れたのはかつての家庭教師で理解できなかった人小松崎輝男の家。相変わらずよく分からない小松崎。

結局アドアイスなのかよく分からない話をされ帰ることに

美智は帰り道、とある家の庭で男性が倒れているのを見つけ、何か運命を感じながらその男性に向かって走るところで物語はおわり

鋼鉄のウール

 主人公である僕が通う児島ジムはかつて多くの人間で賑わっていたが今は苗場と僕と会長の三人だけ。

苗場は元キックボクシングの日本王者で憧れの存在

 主人公の僕は一つ上の板垣からの暴力に耐えられずに児島ジムの門を叩いたけど今はそんなことはどうでもよくなり、ただ苗場のようになりたいと思っている

ボクシングジムは地球滅亡がわかりおかしくなった父疲れ切っている母がいて家には居場所がない僕にとっては大切な場所にもなっている。

そんなある日、同じく板垣にいじめられていた男に板垣が縋りついているところに遭遇

彼の父親が方舟と呼ばれるシェルターの抽選の係だといい、板垣は自分と妹が助かるために必死で男に縋っていたのだ。彼は僕にも話を持ち掛けますが、僕は断ってその場を後にします。

そのままジムに行くと、ジムの会長が「苗場とスパーリングしたらどうか?」と提案してくれた

そうだ僕は今彼に勝つ目標がある。

というところで物語は終わる

天体のヨール

経営する会社は地球滅亡のニュースの後社員が逃げてしまい、妻も地球滅亡のニュースでおかしくなった人に殺されてしまった矢部はもう生きる意味がみいだせず首吊り自殺をはかるがひもがきれて失敗する

するとタイミングよく元同級生の二の宮から電話があり、彼が新しい小惑星を見つけたというので久しぶりに会いに行くことにした。

二ノ宮から新しい小惑星の話を聞いたりするうちに、かつて二人が通った大学に行くことに。

すると大学の食堂には死体がころがっていてまさに終末のような雰囲気

矢部はそこで二の宮に妻千鶴が殺された経緯を話し自分が許せないと伝える。

その後一人でマンションに帰ってきたら、偶然美智に遭遇。彼女はこれから倒れている人を助けに行くと走って行く

美智はそれを「デートだ」と言っていて、それを聞き矢部は妻との時間を思い出し、家にある道具で望遠鏡をつくり月を眺めてから死ぬことにしようと思うところで終わり。

演劇のオール

カメレオンアクターと称されるインド出身の俳優に憧れ役者を目指していた倫理子は仙台に戻ってきた今でも早乙女おばあちゃんの家では孫娘役血のつながりがない2歳下の亜美には姉役、いなくなった母を探している勇也と優希という幼い兄妹の前では母親役、一郎の前では恋人役を演じ分けている

ある日、子供達の母親がしていたマフラーを見つけ彼女がすでに死んでいることを悟ったり倫理子はその事実を幼い兄妹に伝える勇気はなく、役を演じても大事な役割を果たせていないと絶望します。

けれど、早乙女が転倒、背中を痛めてしまいどうしようとなっていたところに、妹の亜美がやってきて、妹の亜美がマッサージできる人と言って連れてきたのが一郎で、さらに子供たちもやってきて・・・

ハートフルなお話。

あこがれていたインド出身の俳優が田舎にいて全く地球滅亡の話を知らなかったってのも面白い。

深海のポール

レンタルビデオショップ店長の渡部が主人公

彼の父親は終末に備えて、マンションの屋上に櫓を作っている。

彼は街が沈んでいく中、みんなが沈んでいくのを見物したいのだという。

櫓は完成間近。

地球滅亡にも怯えない父親に「怖かったこと」を聞くと、母親が奇妙な宗教団体にはまってしまった時だったという。

 結局母親は集会中に父親に連れ出されてそれ以降集会に行くことはなくなったのですが交通事故で亡くなっています。

その後町を歩いていると妻が箱舟とか胡散臭いことを言ってる集会所にはいっていくところを見かけます

気が付くと集会の中に入っていて、華子に向かって大声で呼び連れ出します、帰り道連れていかれただけで興味はなかったのだという妻。

洗脳され知らない人に変わらなかったことに安堵する修一

マンションに着くと、ベランダにたくさんの人が見えました。

父親と娘。富士夫とお腹の大きくなった美咲。空を眺める一郎と倫理子。香取夫婦と娘の康子。

マンションの外を見ると、苗場と僕が走っているのが見えます。

地球最後の日に思いを馳せる修一。

まとめ

彼氏を作ろうって考えたり、子供のことをどうするか考えたり、やってくる小惑星にドキドキしたり、過去の自分の仕事を後悔したり、親子で仲直りをしたり結局地球滅亡とか大きなこと言われてもそっから逃げれないってわかったら(もちろんそこまでに小説にもあった色々パニックはあるんだろうけど)人々は目の前にある問題の方が大きかったりするのは確かにそうかもと思いながら読みました。

もう一通りパニックや絶望を味わい「色々全部考えたけどもうどうしようもない」となった時私はどう過ごすんだろうな

とにかくできれば最初のパニックのさなかにだれかに殺されたり誰かを殺したりすることがなく、その後の小康状態の時にぽっくり死にたいな。

でも、子供がいる限りは衝突してから波がおそってくるその最後の一秒までできれば子供を生かせる方法を考えてしまうかなぁ

気持ち的にはここに出てきた俳優のように「え?衝突するの?」くらいの気持ちで生きていたいけど

好きな言葉

「死に物狂いで生きるのは、権利じゃなくて、義務だ」



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