完璧な母親 まさきとしか

内容(「BOOK」データベースより)

兄が死んで、私が生まれた。一歳の誕生日。ケーキには八本のろうそくが灯されていた。幼くして死んだ兄の代わりに産み直された妹は、母の絶大なる愛情を注がれ空洞として生き続けている。やがて兄の死の秘密を知るもうひとつの家族の告白が波琉子を揺さぶる―「お母さんはいいお母さん?」

著者について

1965年東京都生まれ、札幌育ち。92年『風が吹く部屋」で文學界同人雑誌優秀作、07年『散る咲く巡る」で北海道新聞文学賞を受賞。11年『熊金家のひとり娘』(講談社)が話題に。

あらすじ & 感想

事件や事故があるとそれが自分にふりかかったらどうしようという怖さから被害者にも非があるんじゃないかだから非がない自分はそんな目にあうことはないんじゃないか?という心理が働くと聞いたことがある。

子どもが被害者になる事故や事件もそうやって「あの家庭には何かがあったからじゃないか」特に「母親が完璧じゃなかったからじゃないか」と思われがちだ。

今回の小説はそういうのがテーマ

ここからあらすじ↓

ある日突然小学1年の息子波琉が池で溺死してしまう。

母親千加子は過去にパチンコに夢中になって目を離したせいで子どもがなくなった事件などを見た時に母親失格だからだとだからそんな事件が起こったのだと考えていたが、まさか自分の子供がなくなるなんてとひどくショックを受ける。

そしてもしやり直せるとしたら・・・今度は完璧な母親でと考え、ちょうど息子がなくなってから1年たち息子の波琉と同じ誕生日に今度は女の子を出産する。

この子は波琉の生まれ変わりだ私にはわかると千加子は考える。

そして波琉子と名付けられた娘はことあるごとに母にあなたの中には波琉がいると教えられ、誕生日のたびに自分のプレゼントとそしてお兄ちゃんのプレゼントを渡されて育つ

千加子は今度こそ自分が母親失格といわれないように完璧な母親であろうとする。

ある日、隣に母子二人が引っ越してくる。二人はあまり普段みかけることなく子どもも放置気味。千加子は隣の母が虐待しているのではないかと考えていたが、実は二人は虐待する夫から二人で逃げてきていた。そして千加子はある日父親から守るために母親が自分に灯油をかけて夫とともに死のうとしているところを目撃し母親の愛に安心する(その後警察がきて全員助かる) 

そしてその時に、とっさに隣の子どもを守ろうと男の子の手をぎゅっと握ったことでその男の子の感触などで波琉子が波琉ではないということなどにも気づく

一方波琉子は自分の中に波琉がいないことに対するうしろめたさと波琉がいないと母親に悟られたことのショックなどを抱えて生きている。

話はかわり新聞社勤務の田尻成彦。彼は小さいころから姉とは違い母親に愛されずに育った。赤鬼のように怒っていた母。なぜ自分はそこまで母親に拒否されていたのか‥。

ここからネタバレ

実はこの田尻家の姉が池にはまって落ちた時に波琉がその子を助けようとして飛び込み、その後田尻の母親が二人を助けようと板を差し出したところ先に波琉がその板をつかんだので板で殴って殺してしまっていた。

そして逃げていた。

そのことで精神的にショックを受けた姉は自分が波琉の生まれ変わりだというようになり、そして田尻の母はその後すぐに生まれた成彦の額にあざがあったことからその子が波琉の生まれ変わりだと考え必要以上におそれて拒否していた。

で、成彦が自分が結婚するにあたり、母親と姉に会いに行ってそのことを聞き、新聞社だから色々調べてる間に波琉子に会い、波琉子はそのことを知り自分以外に波琉の生まれ変わりがいたら困ると成彦の姉に会いに行く。

ちょうどその時、母親に波琉の生まれ変わりはあなたじゃなくて成彦だといわれた姉は母を刺殺していて、波琉子はそれをしらずに姉を連れ出してしまう

そして・・・

という話。

ここから感想↓

小1の子供が池で死んでしまうっていうのが読んでいてやっぱりつらかったなぁ。

この小説はその息子が死んだという電話を受けた母親がそのまま気を失って、そのあとただただ時間が過ぎて行ってある日夢をみてそしてそうだ子どもをもう一度産めばいいと思うまでの流れそのまま母親目線で描かれていてそれがとてもリアルでなんというかぞっととした。

そして波琉の代わりとして育てられた波琉子。自分を救うために母が他の子を殺したという罪悪感から波琉の生まれ変わりだということを心のよりどころとして引きこもりの生活を送っていた秋絵、母親に波琉の生まれ変わりだと思われ母が赤鬼のように起こるのは自分が何かしたからだとずっと罪悪感を抱いてた成彦、隣の家の虐待する夫から自分を守ってはくれたがその後も男遊びばかりして最終的に母に捨てられ生きるために戸籍を売りその後殺された涼太 そのみんなが親の育て方で人生をうまく歩めなくなっていて改めて完璧な母親という言葉の重さに私も押しつぶされそうになってしまいそうになる

そんな小説でした。



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