今日の一冊
内容(「BOOK」データベースより)
政治家の映るテレビ画面の前で目を充血させ、必死に念を送る兄。山の中で一日中、呼吸だけを感じながら鳥の出現を待つ弟。人々の心をわし掴みにする若き政治家が、日本に選択を迫る時、長い考察の果てに、兄は答えを導き出し、弟の直観と呼応する。ひたひたと忍び寄る不穏と、青空を見上げる清々しさが共存する、圧倒的エンターテインメント。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
伊坂/幸太郎
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。2003年上期に『重力ピエロ』が、2004年上期に『チルドレン』が、2004年下期に『グラスホッパー』がそれぞれ直木賞候補に選ばれる。2004年には『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を、短編「死神の精度」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
あらすじ
今までの伊坂作品とは作風が変わったかなりメッセージ性の高い作品。
「魔王」と魔王の5年後の世界「呼吸」という中編2作。
「魔王」は安藤(兄)「呼吸」は安藤(弟)が主人公
兄は自分の念じた言葉を相手に言わせることができる能力、弟はじゃんけんに必ず勝つという能力を持つ。
魔王
両親を早くなくし、弟潤也と二人で生きてきた安藤はある日念じた言葉を相手に言わせることができる特殊能力に気づく。
何度か実験をした結果テレビ等の人物は不可能だが、30歩ほどの距離があってもその力は有効で相手はその言葉を話したことに自覚がないことがわかる。
日本政府は最近の弱腰外交が問題になっていて、最近出てきた野党「未来党」の党首犬養に人気が集まり始めている。
「考えろ、考えるんだ」子供のころみたテレビ番組「マクガイバ―」のセリフを口ずさみ、不安を覚える安藤。
ライブハウスでは観客の熱狂する姿にまた不安を覚える。
考えることを放棄して一つの方向にみんながすすんでいってる気がする。
ライブでは行きつけのバーのマスターに会う。
戦争で人を殺したことを命令されたからだと思うことで罪の意識は軽くなる。だから集団が一つに向かっていくファシズムは怖いと安藤は訴えるが、マスターからは「ファシズムは何がいけないのだろう?自由や民主主義より統率が大事だ」と主張される。
ニュースではアメリカで日本のサッカー選手が刺され犯人が「日本人は何をやっても怒らない」といった発言が何度も何度も報道される。
これを受け、暴徒化する少年たち。
安藤も絡まれるが特殊能力を使いなんとか逃げる。
だが帰宅すると隣家の親しい帰化しているアメリカ人の家が燃えていた。でも誰かが言う
「アメリカ人だから消防車を呼ぶ必要ない」と
シューベルトの歌曲魔王で魔王の存在に気づくも父親にわかってもらえず死んでいく少年と今の俺は同じだと安藤は思う。
安藤の会社の近くで犬養の演説会が開催される。
このままではいけない、自分の特殊能力で犬養に不測の言葉を言わせよう。
と安藤は演説会に向かうが、そこにはバーのマスターがいて・・・
呼吸
魔王から5年後の世界。
5年前犬養の演説会で大好きだった兄がなくなった。
潤也と恋人の詩織は結婚している。
犬養は首相になり少しずつ日本は変わろうとしている、
潤也は兄の死後自分が1/10くらいの確率なら100%勝てるという能力に気づき・・・
政治を通して描かれる人間心理の危うさと怖さ。考えてないわけじゃないんだけど、偏った報道に気づくことさえできず大きな流れに流されてしまうタイプになってないか不安です
紙を25回折る(実際は折れない)と富士山の高さになるっていう豆知識はここから得ました。
好きな言葉
人間の進化の最大の武器は好奇心だ。
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