今日の一冊
内容(「BOOK」データベースより)
鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人鬼・榛村大和からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」パン屋の元店主にして自分のよき理解者だった大和に頼まれ、事件を再調査する雅也。その人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也はなぜか大和に魅せられていく。一つ一つの選択が明らかにする残酷な真実とは。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
櫛木/理宇
1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、『赤と白』で第25回小説すばる新人賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
あらすじ&感想
元々はチェインドッグという名前の小説の改題版です。
自分のことを神童だと思っていた主人公の雅也。
でもそれも中学までで、高校に入ってみると自分は単なる井の中の蛙だったことを知る。
そして今ではFラン大に入学するもそのプライドの高さから周りには全く溶け込めない。
同じ大学には、過去の自分のことを尊敬のまなざしてみていた同級生加藤灯里も通っていて時々話しかけてくるがそれすらも同等に扱われているようで腹立たしい。
(小さい頃も別に神童でなかったけど、この気持ちはわかる。賢いといわれて自分でも非凡だと思っていたのに実は凡人だったってことを認めるのってものすごくしんどい。さらに凡人であることは認めたとしてもなお、今いる場所は凡人とはいえ低すぎる。努力すれば運さえ悪くなければここよりはもう少し上が自分の居場所だとまだ勘違いしてしまう気持ち。これは自分を過大でも過少でもなく客観視できるようになるまでにみんなが通る道じゃないかな)
そんな時に30人の少年少女を殺し死刑判決を受けている榛村大和から手紙が届く。
榛村は雅也が中学時代によく通っていたパン屋のお兄さんで、そのころはまだ神童と呼ばれていた雅也を頼って「他の殺人は認めるが最後の殺人だけは自分が犯人ではないからどうかそれを証明して欲しい」と頼ってきたのだ。
雅也は戸惑いながらも榛村大和の依頼を引き受け彼の過去から調べていくことに。
榛村大和は知的にも精神的にもボーダーラインだったと思われる母と母の体目当てでやってくる男たちの元で育った。
一度は榛村も少年院に入るような事件を犯していたが、その後は薬の過剰摂取で亡くなった母の代わり似育ててくれた養母の元で健全な生活をおくることができパン屋として独立してからその評判はとてもよかった。
だがその陰でせっせと少年少女を監禁しては殺していた。
殺されたのはすべて黒髪の少年少女そして爪をはぐなど爪に執着をもって殺している。
ところが最後の事件だけは爪に損傷はない。
雅也は犯罪を調べるという使命を与えられたことで自分の価値を見出し積極的で社交的になっていく。大学でも「変わった」といい意味で評価されるようになっていった。そして雅也は榛村の過去に同情し、最後の事件については冤罪ではないかと考えるようになっていた。
ここからネタバレ
9件目が冤罪ではないかと調べをすすめる雅也。そしてそれと同時にどうして榛村は自分に手紙を送ったのかについても疑問を持ち始める。
そして自分の母親が榛村と同じ義母に育てられていたことを知り、母の言葉から自分が榛村の息子であることと確信する。実際榛村にそのことを問うと榛村は肯定はしなかったものの目に涙を浮かべる。
やがて雅也は、連続殺人犯ではあるものの、やはり榛村はその育ってきた環境のせいで殺人犯になってしまっただけで、本当はいい人なのではないだろうか?という思いと殺人犯の血を受け継いでいる自分にも殺人衝動があるのではないかという2つの相反する感情と戦うように
そして小さい子をみると殺人衝動にかられるように・・・
となっていたけど
実際は冤罪はなくぜーーーんぶ榛村の犯行。
榛村は過去にある兄弟をいたぶって遊んでいた時期がある。両親からネグレクトされ愛に受けている兄弟に最初は飴を与えることで近づき、その後「どっちが僕と遊んでくれる?」と質問し、自分の意思で相手の名前を言わせてその名前を呼ばれた方を痛めつけるという方法で片方には身体的に、もう片方は罪悪感という方法をもっていじめ続けていた。
9件目の事件はそろそろ捕まりそうだと気づいた榛村が、過去の獲物であるその兄を呼び寄せ、まだ自分の支配かであることを確認するために行われた殺人だった(過去と同じように自らの選択で自分以外の人を選ばせ、その選んだ相手を9人目として榛村が殺すことで強烈な罪悪感を植え付けていた)
で、この雅也もまた彼の獲物の一人だった。
別に雅也は榛村の子供でも何でもなくて、雅也の母はレイプされ妊娠し、性的虐待経験がありトラウマがある義母にばれると家を追い出されると思った母が榛村に相談し、榛村にそそのかされるままトイレで産んでそして殺してしまっていた(しかも結局妊娠したことを榛村に尾ひれをつけてちくられて雅也の母は義母との縁を切られいてる)
母はそのためその後も自己肯定感が低く、祖母と父が支配する家ではまるで置物のような存在感となってしまっていて雅也との間にも信頼関係を築けずにいたが、雅也と榛村がつながっていることを知り、榛村が父親でないことと榛村の過去のことを雅也に話すことができる。
雅也はようやく榛村の呪縛から解き放たれ榛村の元を去る。
そして最初はバカにしていた灯里を誘いデートへ・・・
でも榛村はこの灯里にも手紙をかいていた・・・
ということがわかったところで物語は終わり
感想
ライトなところもあるけど総じて面白かった!
殺人事件に巻き込まれたくないと思って生きているので(当たり前か)加害者がわかりやすく悪人でなかったり被害者に全く非がない場合にその避けようのなさに恐怖を感じる
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