【朝起きたら引きこもりの息子が虫に】人間に向いてない 黒澤いづみ

今日の一冊

内容(「BOOK」データベースより)

ある日突然発症し、一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる病「異形性変異症候群」。政府はこの病に罹患した者を法的に死亡したものとして扱い、人権の一切を適用外とすることを決めた。不可解な病が蔓延する日本で、異形の「虫」に変わり果てた引きこもりの息子を持つ一人の母親がいた。あなたの子どもが虫になったら。それでも子どもを愛せますか?

著者について

黒澤 いづみ
福岡県出身。本作で第57回メフィスト賞を受賞しデビュー。

ネタバレありあらすじ

カミュの変身みたいなお話。

人間が突然異形に変わってしまうという病気。引きこもってる若者に発症するが治療方法や原因等は不明。政府はこれを100%死に至る病と認定し、異形になってしまった時点で死亡届を出すという法律を作った。

主人公の家でも引きこもりの息子がいた。

暴力をふるったりということはないが、毎日ご飯を食べに下に降りてくる以外は基本部屋に引きこもりの息子。

今日は大丈夫。今日はまだ人間。と毎日おりてくる息子をみては安心していたが、ある日やっぱり異形になってしまう。

むすこの場合は虫っぽい返信。でも百足のようにはえている足はすべて指だったり人間の形を残していてみるものには嫌悪感を与える。

夫はすぐに殺処分もしくは昔手を噛んだ飼い犬をそうしたように森に捨てに行こうというが、母はなかなか踏ん切りがつかない。

気持ち悪いけど息子なんだもの・・・

そうしてるうちにそういう子供をもった親のあつまりをネットでみつけ通うようになった。

そこには同じような異形の子供をもつ親があつまっていて・・・

この後なんかまぁ色々あるけど子育てに失敗したと感じて引きこもりの息子を疎ましく感じていたことに気づき反省したあたりで息子が人間の姿に戻る。

そして逆に息子が虫になった時点で殺すか捨てるしか選択肢がなかった父親が次は虫になってしまうというところで物語は終わる。

感想

かわいかった息子がなぜか引きこもりになってしまった。

という絶望を少し大げさに虫に変身させているだけなので、ありえない設定ではあるもののそんなに違和感なく読むことができます。

読んでる途中に息子たちが「何を読んでるの?」と聞いてきたので「自分の子供がある日突然気持ち悪い虫になっちゃうお話」といったところ「もし僕がそうなったらどうする?」と質問され「もちろんそうなってもかわいい息子だよ」と答えたものの、その後「見た目が大きな大きなゴキブリにしかみえなくても?」と言われ悩みました。

ゴキブリの見た目で意思疎通できなければそれはもう人懐っこいゴキブリにしか思えないのでは…。

そう思うとなかなかな恐怖です。

物語では主人公の息子は虫に変身してますが、他にも犬みたいなふわふわな生き物に娘の顔面だけはりつけたような異形や植物のような異形など様々な異形が登場します。

総じて気持ち悪いので挿絵等がなくてよかった。

特に、魚ぽい形に変身した息子を育ててる間にある日気が付くとフライパンで焼いてすべて食べてしまったという母親の話たんたんと語ってるだけに怖く印象に残りました。

ということでただ息子によりそうということができて、それがきっかけに元に戻ったと書いてしまうと簡単ですが、母親の美晴はよく根気よく息子ぽいけど気持ち悪い虫を育てたなと思います。息子への愛情の深さを感じる。と同時に最後に虫になってしまった夫にはそこまでの愛情がないだろうからきっと夫は虫のままだろうなとも

そしてどうせもう元には戻らないし、政府も死と認めてくれたからと愛していたはずの子供の異形を殺したり捨ててしまった人たちの今後を考えると・・



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