本日の一冊
内容(「BOOK」データベースより)
近年その覇者が音楽界の寵児となる芳ヶ江国際ピアノコンクール。自宅に楽器を持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女としてデビューしながら突然の母の死以来、弾けなくなった栄伝亜夜20歳。楽器店勤務のサラリーマン・高島明石28歳。完璧な技術と音楽性の優勝候補マサル19歳。天才たちによる、競争という名の自らとの闘い。その火蓋が切られた。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
恩田/陸
1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年「夜のピクニック」で吉川英治文学新人賞と本屋大賞、06年「ユージニア」で日本推理作家協会賞、07年「中庭の出来事」で山本周五郎賞、17年「蜜蜂と遠雷」で直木三十五賞と本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
あらすじ
ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝するというジンクスがあり最近注目されている芳ケ江町で3年に1度行われる国際ピアノコンクールの話。
まず舞台はこのコンクールの前段階パリでのオーディション
そこにやってきたのは父が養蜂業を営んでいるという異色の経歴を持つ風間塵という少年。
師事した人の項目に故ユウジ・フォン=ホフマンの名前があり、嵯峨三枝子をはじめとする審査員は動揺する。
しかもその少年の演奏はまるで悪魔の様で、三枝子は激しく彼の音楽に嫌悪感を持った。
しかしホフマンの推薦文には「彼は『ギフト』である。中には彼を拒絶する者もいるだろう。彼を『ギフト』とするか『災厄』としてしまうかは我々にかかっている」と書かれていて三枝子は他の審査員は拒絶ではなく多幸感を感じていたこともあり彼の合格を承諾した。
芳ヶ江国際ピアノコンクール1次予選
栄伝亜夜
小さいころかジュニアコンクールを制覇する有名人だったが、指導者である母が急逝したことで演奏ができなくなり、コンサートをドタキャン。
その後、友人とバンドを組んだりと普通の学生生活を送っていたが、母の同期だったという音大の学長に頼まれてピアノを弾いたことをきっかけに、音大に入学。
20歳となり学長への恩返しも兼ねてこのコンクールの出場を決めるが一次予選の段階では乗り気ではない。
高島明石
28歳。コンクールでは最年長。
結婚して子供もいる。普段は楽器店の店員。
幼稚園の息子が大人になったときに「パパは本当に音楽家を目指していた」という証拠を残しておきたくなり、今回のコンクール出場を決める。
風間塵
フランスで合格した風間塵。
塵の家にはピアノすらない。にもかかわらず今回の審査員の一人であり三枝子の元夫である故ホフマンの弟子のひとりであるナサニエルにさえ書かなかった推薦状をホフマンは彼に書いている。
彼の演奏を聴き審査員は案の定真っ二つに評価が分かれる。
マサル
ジュリアードの王子様と呼ばれるルックスの持ち主。
1次予選から彼の演奏を聴くために多くの女性が集まる。
マサルは実は亜夜に音楽を教えた綿貫先生のレッスンを一緒に受けていた。その後フランスにいき離れ離れになってしまっていたが、ここで奇跡の再会。
ここからネタバレ
1次ではトップバッターのアレクセイをはじめ24人のコンテスタントが合格。
その中にはもちろんマサル、塵、亜夜、そして明石も残っていた。
そして2次では12人に絞られる。
アレクセイ、マサル、塵、亜夜など。明石は落選
そして3次を経て審査結果は
- 1位 マサル
- 2位 亜夜
- 3位 塵
- 聴衆賞にはマサル
- 奨励賞にはジェニファチャン(超絶技巧テクニックがありながら2次で落とされた少女) と明石
- 菱沼賞という課題曲の作曲家菱沼が選んだ賞は 明石
が受賞しました。
感想
途中まであらすじを書いていて思いましたが、これあらすじだといくら細かく書いても全然良さが伝わらないタイプのお話。
結局あらすじでいうと、若いピアニストたち+崖っぷちの28歳ピアニストたちがそれぞれ切磋琢磨してコンテストの入賞を果たすという物語になってしまうんですが、この小説のよさは曲ごとに描かれるバリエーション豊かな曲の表現や主人公たちの細かい心理状態の描写なのでその辺があらすじでは全く伝えることができない・・
本当曲を聴くのではなく目で鑑賞するという不思議な体験ができました。
実際の曲を知らなかったのでぜひこのCDを購入し今度は曲を聴きながらそしてもう一度目で読んで曲を感じたいと思わせてくれる作品でした。
また若き天才達の心理描写がとってもいい。
一人一人がわかりやすいキャラクター設定ではなく、一人の人格として丁寧に描かれていて読んでいるだけで若き天才たちのファンになりそう。実在していたらいいのにとさえ思っちゃいます。
3人以外にも、テクニックはあるものの3次にすすめんかあったチャンにもその落ちた理由をきっと彼女は自分で気づいて次への飛躍につなげてくれることも感じ取れたり
何より天才たちのひしめくコンクールの中で唯一普通っぽさ(といっても彼もまた天才なのですが)を醸し出している28歳の明石には感情移入しちゃって、菱沼賞をもらえて明石の努力がちゃんと報われたところでは泣いてしまいました。
この本の気になる言葉
人間の呼吸は「吸って、吐く」のではなく、「吐いて、吸う」のが基本なのだそうだ。
赤ちゃんはこの世に生まれてくる時、大声で泣き叫ぶ。出てくる時にまず「吐く」のだ。
そして、人生の最期には、すっと「息を引き取る」。最期には「吸う」のだ。
この本はこんな人におすすめ
- クラシック音楽が好きな人
- 何かに真剣に打ち込んだことがある人
- 挫折した経験がある人
この本が好きな人にはこんな本がおすすめ
続編でてます!
映画にもなっています
コメントを残す