少女葬 櫛木理宇

内容紹介

ドミトリータイプ、キッチン、バス、トイレ共同、敷金礼金なし、保証人不要、性別および年齢制限なし。そんなシェアハウスに飛び込んだのは、毒親からの精神的虐待に堪えかねた16歳の少女・綾希。そこで彼女は、自分と同い年で、同じく家庭内不和の被害者である少女・眞実に出会う。住人も住環境も劣悪な中、なんとか生計を立てようと足掻く二人だが、些細なきっかけから別離していき、やがて――。物語は少女の一方がもうすでにこの世にはいないことを、しかもそれが壮絶なリンチの果ての死であることを明示しながら取り返しの付かない「その日」へ向かって進んでいく。いったい二人の運命を分けたものはなんだったのか。その選択は、死ななければならないほどの愚行だったのか。ラスト一行まで胸に迫る、家出少女たちの友情と抗いを描く衝撃作。

あらすじ&感想

前回読んだ死刑に至る病が面白かったので他の作品もということで読んでみました

毒親の元で育った綾希は、お年玉などをこつこつためて16歳で家出をする。

ただ16歳で両親にも頼れないため、寝泊まりするのは保証人がいらない代わりに、キッチンもお風呂もトイレも共同で、2段ベッドだけが自分のテリトリーという治安の悪いシェアハウス

そこで彩希は同じように家を飛び出してきた眞実に会う

綾希は絶対体を売らないと決めていたり、常に今の状況に危機感を覚えていたりとしっかり者。

一方眞実は人は良いが、後先考えずに行動してしまうタイプ。

たったそれだけの違いが、その後を大きく変えてしまう。

綾希は偶然入ったカフェの店長の女性に気に入られて、アクセサリーを作る仕事をもらい、その後はバイトの口利きもしてもらう。

さらにその店長の息子と付き合うことになり、最終的にはシェアハウスをでて一人暮らし、バイト先で仕事をしながら調理師の免許も取得した。

眞実はシェアハウスに遊びに来ていた先輩に憧れて行動を共にするようになる。

羽振りのよい先輩は眞実に色々物を買ってくれるし、顔も広い。

先輩の知り合いで始めてみた時からかっこいいなぁと思っていた亮とも付き合い始める

遅くまで遊びまわるようになり綾希とはどんどん疎遠になってしまう。

そして、亮はどんどん眞実にひどい扱いをするようになり、先輩も眞実に飽きたあたりで、些細なことがきっかけに先輩が呼び出した男たちにリンチされ最終的に殺される

眞実は確かに賢い子ではないし、悪い世界を大人の世界と思っちゃうほど幼い。目の前のことしか考えていないし、何か起こっても何も解決できずにただその場をやり過ごすことしかできない。

そして家族から愛された記憶がないので愛にすがる

綾希は確かにあのシェアハウスでも自分というものをしっかり持ち続けて危機管理能力も高かった

でも眞実は殺されるほどの愚行はしていないし、綾希が人生を立て直したのは偶然に近いと思う。

というか二人の親さえしっかりしてくれていれば、二人とも間違いなく普通の幸せを手に入れていたのに・・・

と子どもを持つ親としては二人の少女が不憫でならないというのが感想。

ただ、でも、うーーん

この小説はどこかめちゃくちゃ軽いな。漫画に似た小説な感じでした。

毒親やSNSでの拡散等現代社会の闇部分をリアルに書いている部分もあるんだけどどうしてもグロテスクに書くことに重きを置きすぎてる気がしてもう一つのめり込めませんでした。

あ、でもグロテスクすぎる内容にそぐわない殺害動機とも言えない動機と何の罪悪感もなく人をリンチして殺してしまうという小説にするには薄っぺらすぎる出来事が現実でも事件として起きているので、これが正解なのかもしれないなぁ。そう考えるとじわじわ怖くなります。

この本昔は「FEED」というタイトルで販売されていたものを「少女葬」にかえて再販売した作品らしい

題名は絶対変えて正解だと思う。



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