【私の中の恩田陸NO1 真相はやぶの中】ユージニア 恩田陸

今日の本

内容(「BOOK」データベースより)

「ねえ、あなたも最初に会った時に、犯人って分かるの?」こんな体験は初めてだが、俺は分かった。犯人はいま、俺の目の前にいる、この人物だ―。かつて街を悪夢で覆った、名家の大量毒殺事件。数十年を経て解き明かされてゆく、遺された者たちの思い。いったい誰がなぜ、無差別殺人を?見落とされた「真実」を証言する関係者たちは、果たして真実を語っているのか?日本推理作家協会賞受賞の傑作ミステリー。

「BOOK」データベースより

著者について

1964年宮城県生まれ。1991年、第三回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作『六番目の小夜子』でデビュー。『夜のピクニック』で、吉川英治文学新人賞と本屋大賞、『ユージニア』で、日本推理作家協会賞長編賞、『中庭の出来事』で山本周五郎賞受賞。

「ユージニア」考察メモネタばれあり

第一章

語り手は、吉永満喜子旧姓雑賀さん)
聞き手は、後でわかるのですが、満喜子の兄である順二の友人で事件について再調査している女性。
大きな庭園で話をしている。

この章で事件についての概要が語られている。

満喜子は大学時代にこの事件について様々な人にインタビューして本を出版していた。

事件が起きたのは青沢家。大きな白い百日紅がある家

黒い野球帽に黄色い雨合羽を着た男がジュースやビールを届け、飲んだ人たちの多くが死亡した。

その黒い野球帽に黄色い雨合羽を着ていたとされる男はのちに自殺している。

青沢家の家には群青の間と言われる青い部屋がある。2階の角部屋。

家に住んでいて助かったのは眼の見えない緋紗子のみ。

事件現場にはユージニアと言う言葉が書かれた手紙があった(筆跡鑑定で自殺した彼のものかどうかは不明だった)

満喜子は今日偶然あの事件の婦人警官に会う。
その婦人警官に緋紗子が事件後に青い部屋の話と白い百日紅の話をしたと聞き驚愕した、そして事件現場にきて真犯人が分かったらしい。

満喜子は10人の人間がいて9人が残されたら残る1人が犯人だという

この時点では真犯人は残されたひさこ

第二章

語り手は大学時代に満喜子が事件についてインタビューしていた時に同行していた男性

あこがれの先輩だったが、大学時代満喜子には彼氏がいた。

ほとんどのインタビューに同行したが、緋紗子のインタビューには同行しなかった(後でもう一人動向していない人物が登場する)

彼は青澤家の白い百日紅を知らないという。(→違う家と勘違い?)
質問する満喜子がインタビューする相手によって性格まで変えて質問していたことが印象的と話す。

満喜子に、みんなが見るもので特定の人にだけメッセージを残したいときはどうするか?という質問をされたことを思い出す。

彼女が書いた「忘れられた祝祭」の意図的に証言を変えている部分があった。
もしかしたらそれが、自分だけに対するメッセージなのかもしれないと思う。

後にこのメッセージは緋紗子宛てと判明

第三章

小さい頃の満喜子が主人公
多分「忘れられた祝祭」の一部分だと思われる。

青澤が相澤に、緋紗子が久代と微妙に名前に変化がある。
又、兄誠一と緋紗子が対戦したゲームが将棋となっているが後に誠一はチェスと語っている。

マキは事件当日の朝、自分の家の庭で白い繭のような何かをガラス越しにみる。(あとで出てくる順二と猫と思われる)

玄関の隣には赤い百日紅の木。

緋紗子の外出に遭遇。
緋紗子はお祝いのお菓子をとりにいく所というがその後会った時も特に荷物は増えていなかった。

ここで分かった時系列

この時すでに兄の順二は一度、青澤家を訪れているらしい

(緋紗子談)

緋紗子に不吉な予感がするからうちに来るなと言われる。

順二が一度帰ってくる

順二をおいて満喜子が一人で青澤家へ、勝手口に誰のものかわからない古い赤いミニカーがあり。

青澤家の末っ子がポケットに直している

緋紗子が帰ってきたので満喜子は急いで家に戻る。

順二が親に頼まれた品を持って青澤家に向かってるところに遭遇②

満喜子。黒い野球帽、黄色い雨合羽の男に青澤家への道を教える

順二がジュースを飲みに誘ってくる

第四章

語り手は、第三章にも少し出ていた青沢家のお手伝いキミさんの長女。キミさんはすでに死亡。

母は毒を飲みながら助かったので、犯人ではないかと疑われたことがある。

青澤家の丸い窓は3つ並んでいる。一つ一つが部屋になっていて右が電話室、真中が洗面所、左が棚が1つあるだけの部屋。

母親に聞いたところ『奥様の』としかいわなかった。
どうやら青澤家の奥さんが懺悔の部屋のように使っていたらしい。

母のところに来ていた刑事は鶴を折る中年男性と中年女性。

中年男性の刑事は水面に映った鶴のようにお腹のところで向かい合わせになっている鶴を母に渡すと母親はワーッと泣きだし『違うんです。私は生き残るべきじゃなかったんです』と刑事に訴える。

彼女は、事件の犯人が自殺し合同慰霊祭を終えて帰る途中に緋紗子が笑顔でブランコに乗っているのを目撃している。

満喜子はこの母親にもインタビューに来ている(一人きりで

母によると、事件の日、毒入りのドリンクを飲む直前、電話がなったらしい。

電話に出ると若い女性が「皆さんお元気ですか?おかわりありませんか?」「痩せた犬をみませんでしたか?」といって切れる。

その電話のおかげでほとんど毒入りのドリンクを飲まずにすんだ。

廊下に、末っ子がポケットに入れていたはずの赤いミニカーがなぜか置かれていた

第五章

語り手は4章に出てきたタバコをやめ鶴を折るのが趣味になった刑事
唯一の青澤家の生き残りである緋紗子を見た瞬間、刑事は彼女が犯人だと直感した。

第六章

語り手は満喜子の一番上の兄誠一満喜子はいろいろな人になりきれることができた。
他の人になりたいと満喜子も言っていた。

父と母は険悪だった。
あの事件後、結局別れることになった。

家族で食べる最後の食事としてビーフシチューを食べていたら突然気持ち悪くなり全員が吐いた。

ただ一人妹の満喜子だけはビーフシチューに手をつけていなかった。
なんとシチューに吐き気がするという草を入れたらしい。

悲鳴のように理由を問いただそうとする母親に満喜子は「人に毒をのませるのってどんな気持ちか知りたかったと答える」妹がなりたいと思っていた人物は犯人だった。

(→満喜子は緋紗子を犯人だと思っている)

第七章

語り手は文房具屋の若旦那

そばやの掛け軸の絵には額に目のようなものが描かれた男の絵だった。
その絵を最近じっと見る男がいる。

ある日、寺でその男について聞く。
男は若いうちに両親をなくし、たった一人の肉親も結婚を間近にして殺されたせいで、病気になってたらしい。

最近は仏像に興味をもっているらしい。

特に3番目の目について・・・。

そして事件のあった日、黒い帽子をかぶり黄色い雨合羽を着たその男を目にする。

その男は「やっと返事ができました」とつぶやいている。

第八章

語り手は、自殺した犯人の近所に住んでいた子供で現在はちゃらい感じの男性。

この男性も犯人は自殺した男性ではないと思っている。
自殺した男性は「花の声」が聞こえると言っていた。
そして「花の声」にメモをもらったと言っている。
メモにはさらっとした女性らしい字。
後に「花の声」は白いさるすべりが咲くあの事件があった病院から聞こえてくる声に似てると判明。

花の声は後に緋紗子であると確定する)

第九章

緋紗子と青年の会話 

緋紗子は一人になりたいと青年にいっている。
緋紗子の母親がこの会話を聞いていることを示唆するような一節もある。

②キリスト教を感じさせる話。緋紗子の母?

緋紗子と青年の会話。小さな子どもたちもでてくる。
ユートピアについて話している。

④教会に併設している養護施設で子供に話しかけている緋紗子。
寂しいおじいさんがいるから花火をもっていて楽しく遊んであげようと計画している。
これがのちの古本屋の火事につながる

第十章

満喜子の取材メモ。
7=お手伝いのキミ
6=緋紗子
古本屋によく通い、地域限定のゴシップ雑誌を探している様子が書かれている。
その中のM書店はその後火事で焼失している。

その後「忘れられた祝祭」の出版担当者の語りに代わる。
出版後謎の電話が一度あった。
満喜子の知り合いだから連絡がとりたいという中年女性。
電話は海の近くからかけられているようだった。
ただ、こちらから連絡先を聞こうとするとぷつりと電話はきれた。
切れる瞬間に彼女のそばに若い女性がいたことがわかった

青澤家に残された手紙を満喜子は暗闇にいる人が書いたものだと解釈
すなわち緋紗子のことか?

第十一章

語り手は第五章の人と同じ担当刑事。すでに隠居生活。
あの時のことを思い出して語る。

子供が目撃したメモが見つからないまま事件は終息してしまった。
最後にキミさんに渡したのと同じ折りヅルを緋紗子に渡すと「刑事さんと私に似ている」というが意味は不明のまま。

その後満喜子が書いた本を読み、その本に古本屋が出てこないことを不審に思う刑事
わざと書いてないのだとしたらなぜ古本屋の記述だけないのか?
そして今も残る古本屋のうち、自然科学を得意としている古本屋にでかけたら、すでに火事でなかった。

緋紗子は火事の時は海外にいたが、その半年ほど前に日本に戻ってきていた。

その時この本を手にとって真相に気付いたのでは?

その後キミさんから事件当日電話があったという真実を聞かされる
[第4章]に出てきた電話。

そして潮騒を聞くのが好きな緋紗子を何度か海につれてきたことも話す(10章の電話ではやっぱり緋紗子が近くにいた?)

第十二章

ファイルからの抜粋として、
満喜子の死亡記事
・青澤家の取り壊しの記事

満喜子の死亡についての問い合わせの回答から第一章の直後に死亡したと思われる。
飲んでいたラムネのビンがなくなっていることと、一緒にいた女性がふくよかで2歳くらいの女の子を連れていたことが書かれている。

順二は20代に自殺したことが判明。

そして順二の第一章の聞き手である友人に対しての手紙。

順二は当時のことをこう書いている。

まず青澤家にいく。ちょうどビールとジュースが届いていた。

しかし、ふたがすぐにあいたことを不審に思い飲まずに一本だけもって帰る。

それを猫にのませたらすぐに様子がおかしくなった。

それを誰にも言わずにいた。瓶の中身を下水口に流し、瓶を返して、家に帰り妹を呼びに行った

これはかなり重要な証言。
これでいくとジュースやビールを持ってきたのは自殺した犯人より前の人物?

第三章との違いに注目。

第十三章

語り手は緋紗子と順二から手紙を受け取った友人。

緋紗子は目が見えるようになっている。

ただ、幻想的だった少女時代とは違いどこにでもいそうなおばさんになっている。

そして自殺した犯人との出会いについて語る。
そこで自殺した犯人に語った彼女の願いは、一人になること。
友人である彼と二人だけの国をユージニアと名付けた

第十四章

語り手は満喜子
第一章の前後の満喜子について書かれてると思われる。

この日満喜子は、ふらりとこの町に降り立ち、その後婦警に会い『青い部屋と白い百日紅』についての証言を聞き、そして順二の友人である女性に必然なのか偶然なのか会い、その後、同公園で死んだと考えられる。

死亡については熱中症なのかなぁ?その辺はよくわからず。

満喜子が書いた本「忘れられた祝祭」は緋紗子に対して書かれたものだったということが判明。

ちなみにここでようやく白い百日紅についての記述がある。
緋紗子は家の前の木に咲いている花をさるすべりではなく「ひゃくにちこう」だと思っていた。
そして別の花のことをさるすべりだと思っていた。

すると、あの事件の後、緋紗子が「青い部屋と白い百日紅」といっていたのはどの場所のことなのか?

青い部屋は群青部屋ではなく、母親の瞑想室だったとわかる。
そしてその部屋の青いガラス窓には中央にフラ・ダ・リという百合の花をかたどった文様が入っていてそれを緋紗子はさるすべりだと勘違いしていたのだ。
そこに連れて行かれ緋紗子は幼い日あの部屋で何を告白し何を懺悔したのか。。

緋紗子の母は敬虔なクリスチャンだった。
娘の目に奇跡が起こると信じていたのはこの母親だたのでは?
何か大きな犠牲が必要だと考えていたのでは?

ざっくり読むと緋紗子が犯人で自殺した犯人が実行役となるんだろうけど、ここに緋紗子の母がかんでくる。

緋紗子が「一人になりたい」と願い、それを自殺した犯人に言ったんだけど、その話を緋紗子の母も聞いていて、緋紗子にあの住所を書いたメモを犯人に渡させた。

緋紗子の目が治るという奇跡のために。

それに気付いた、緋紗子は当日いろいろな方法で阻止をこころみてはみるものの、完全に阻止する気にはなれない。

そして順二もまた「毒入り」ということを知っていながらまた止めなかった。

そのせいで事件は起こった

て感じかなぁ?でもそれだったら順二の手紙で書かれてる毒入りビールとジュースがおいてあったという記述の順番が満喜子が考える順番と違うのが気になる。

感想

面白かった本ベスト5には入ってくる作品。

名家で起こった大量毒殺事件。
数十年の時を経て、今その真実がさまざまな関係者の言葉で解き明かされていくという、恩田陸さんの『Q&A』と同じインタビュー形式から始まる物語。

誰もが昔の毒殺事件について語っているんだけど、すべてが本当の話じゃないんです。

語り手の誰かが嘘をついています

なので読んでいて「あれ?これさっきとはちょっと違う?」っとなって手が止まってしまいます。

でもその違いは1つ1つは例えば「将棋がチェスに代わってる」というようにこんなことが事件につながるのかわからない小さいことだったりするのです。

しかもすべて最後につながってるくれるのかと思いきや、結局犯人が誰かという重要な所がぼやーーっとしたまま終わってる!

ということで私には珍しくメモをとりながら読むことにしました。

考察結果

こうやって考えると犯人は・・

と、まぁでも人によって犯人は変わってもいいんじゃないかしら?
とにかくこの本の雰囲気に入り込めたらそれだけで楽しめちゃう気がします。

なんだか考えれば考えるほど頭が混乱してしまうのが作者の意図だと思うし。

(作者はツインピークスのような作品と言ってたけどまさにそんな感じ。怪しい人物はいたはずなのに未解決事件になってしまった話を描いてるのでこれでいい気がします。)

とにかくもやーっとしてて嫌な気分になるんだけど、それがこの本全体に流れる空気とあっていていい感じなのです。

なので本格ミステリーが好きな人にはお勧めできないかも・・・。

みんなはどんな解釈をするんだろう。
それも知りたい。

読んだらぜひあなたの感想を聞かせてください。

この本はこんな人にお勧め

  • 他者目線で進むストーリーが好きな人
  • 最後まで真相がわからないことが逆に面白いと思える人

この本が面白かった人にお勧めの本

他者目線で進むストーリー

最後に謎が回収されなくても平気な人へ

木洩れ日ひ泳ぐ魚



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