内容(「BOOK」データベースより)
「これでおまえも一人前だな」入社三年目の夏、常に最下位だった営業成績を大きく上げた修哉。上司にも褒められ、誇らしい気持ちに。だが売上伝票を見返して全身が強張る。本来の注文の11倍もの誤受注をしていた―。躍進中の子役とその祖母、凄惨な運命を作品に刻む画家、姉の逮捕に混乱する主婦、祖母の納骨のため寒村を訪れた青年。人の心に潜む闇を巧緻なミステリーに昇華させた5編。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
芦沢/央
1984(昭和59)年、東京生れ。千葉大学文学部卒業。2012(平成24)年、『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
あらすじ&感想
目撃者はいなかった
葛城修哉は営業マン。いつもパッとしない成績だったのに今月は成績がよく、先輩に褒められる。
「そんなに今月売上ったけ?」と思い確認してみると1枚しか注文受けていない木材の注文を11枚と打ち間違えてたことが判明。
すぐに訂正すれば何とか間に合いそうだけど先ほど先輩に褒められた修哉はそれをせず自分で10枚買取ってごまかすことに。
そのため、彼は取引先に出向き、11枚の木材を取引先のふりをしていったん受取そのうちの1枚のみを納品することにした。
すべてはうまくいったと思った時に、ちょうど車の追突事故を目撃してしまう。
翌日新聞で確認すると突っ込まれたワゴン車の男性が亡くなっていた。しかもそのワゴン車が信号無視をしたことが原因と書いてある。確かワゴン車は信号無視してなかったはずなのに・・
その後被害者の男性の妻が取引先を経由して彼のもとまで来て、目撃したことを証言してほしいと頼んでくるが、証言すると売上のごまかしをしたことがばれてしまう‥。
もともとの10枚のミス自体が会社の経営を揺るがすほどのミスではないためなぜ素直に報告しないんだろう…。となりますがこういう小さな嘘があとあとどうしようもなくなっていくことあり得そうなのでやっぱりごまかすのはやめようってなりました(単純)
ありがとう、ばあば
孫がカギをしめて寒いなかベランダに閉じ込められた主人公。
最初は冗談だと思っていたけどどうやら本気で鍵を開ける様子はなさそうで…。
子役になりたいという孫のために行きすぎたしつけをする祖母に対する孫の復讐かと思いきや年賀状の写真がかわいくなくて(それで祖母が年賀状を作り直せと母ともめていた)ばぁばが死ねば今年年賀状出さなくて済むと考えたことによりベランダにとじこめたというオチ。
ある意味復讐より怖い。
絵の中の男
女性鑑定士のもとに浅宮二月の作品と思われる絵が持ち込まれます。二月は夫を殺害し今は刑務所に収監されています。
鑑定士の私はかつて二月の家で家政婦として働いていたことがあり…。
幼い頃強盗により家族を殺されその経験が絵に反映され売れっ子作家になった二月。
でも子供が産まれてからはそういう独特の絵が描けなくなります。
けれどその子供がサプライズでお母さんのお祝いをしようとしていたところろうそくが燃え移り家事で焼け死んでからはまた絵が描けるように。
つまり彼女にふりかかった悲劇が彼女の作品を作り上げているよう。
実際持ち込まれた作品は彼女の作品ではなく彼女の夫が書いた作品でしたが、その絵を見て主人公は事件の真相に気づきます。
実際は彼女が夫を殺したのではなく、彼女が止めるのを振り切り夫が自分で首を切って死んだのだと。
夫は自分が壮絶な死を彼女の前で迎えれば、彼女はきっとまた素敵な絵をかいてその絵の中で自分が生き続けられると考え自殺したのでした。
そのプロセスを夫視点で描いたのが今回持ち込まれた絵だったというオチ。
そしてその後二月は一作品だけ絵をかいて逮捕されることで今後絵を描かなくて済むという選択をしたというオチ。
姉のように
志摩菜穂子という女性が3歳の娘を虐待して殺したという新聞記事。
その後主人公が事件を起こした姉のせいで困っているという話が続きます。
毎日ネットで検索しては姉に対する誹謗中傷を目にして、実生活でもママ友にさけられて、
でも夫は全然気持ちをわかってくれないし娘も全然いうことを聞いてくれない
そしてついに娘に暴力をふるってしまい、さらに階段から突き落とし殺してしまいます。
で、そこで種明かし。冒頭の事件は私自身の記事。姉の犯罪は窃盗だったというオチ。
許されようとは思いません
結婚を考えている女性と一緒に祖母が暮らしていた村に向かう主人公。
彼女との結婚を躊躇しているのは祖母が殺人犯だったから。
道中彼女に祖母について語る主人公。
祖母は祖母の義父が認知症になってから何度も村人に迷惑をかけたことを理由に村八分にされていて・・・
その迷惑が実は認知症ではなくわざとだったことがわかり殺したというのが殺害動機。
で、今では村十分
でも実はこの村十分が亡くなった祖母の願いだったのではと彼女は気づきます。
死んだあとも墓にいれてもらえないことで曾祖父と同じ墓に入るのを避けたのでは?と
感想
どれも短編だけどとてもうまくまとまっていてよかった。どす黒いというか薄墨のような黒い気持ちになれました笑
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